6話 ページ7
一昨日の事を思い出し顔の表情筋がゆるみそうになった。だが此処は理事長室だ。
思い出すまいと頭を振り頭の中に浮き出ている一昨日の出来事を消そうとする。
「B組の子から話は訊いてるよ。君はE組を庇った挙句、胸ぐらを掴み暴言をはいたのだそうだね?」
『……あ、ぁ……はい』
言いやがったな…あの糞野郎…。一発殴ってやりたい。
「君のようなおしとやかで優等生はそんなことする筈がないと思っていたのですがね…」
実に残念だというままに眉毛を下げる。もうここまでなると恐らく雫川はE組いきだろう。
だが前々からこの学校の教育方針には気に食わないし、差別するぐらいならされる側の方がよっぽどマシだ。
『私はE組いきですよね』
「……ああ。だが浅野君は気に食わないらしいがね…」
『……学ちゃんが…』
学ちゃんこと浅野学秀、この学校の生徒会長であり雫川の幼馴染み。理事長と同じ“浅野“、つまり親子だ。だが親が息子を名前で呼ばず、名字で呼ぶのはどう見ても不自然で違和感を感じ過ぎる。
『学ちゃんには後で言っておきます。では失礼しました』
礼をし、理事長室から出ていった。
ふと横に視線をやると、オレンジ色の髪の生徒会長の腕章を腕に付け腕を組んでいる浅野学秀が仁王立ちで壁にもたれかかっていた。
『学ちゃんごめん、私E組に行くから。多分明日から』
「……ああ、知ってる」
浅野は哀しそうな表情をし、目線を下に落とした。
学ちゃん……。
周囲からは腹黒生徒会長などと思われているのだろうが、何故か雫川に対しての接し方は優しいものだった。
「お前がそう決めたのなら僕が同行言うことではないが……戻って来たくなったらいつでも戻って来たらいいからな」
彼はいつもと同じく優しい表情になる。
『ありがと、学ちゃん』
と、軽く微笑む。
戻って来てもいいと言われたが、本人は戻る気など更々ない。
心の中で浅野に謝罪しながらその場を逃げるようにして去って行った。
「A……」
彼女の名前を呼んだ浅野の声を雫川が気づく事は決してなかった。
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作者名:あやか | 作成日時:2017年12月15日 7時