アプリコットフィズ『条野採菊』※ゆらさんリクエスト ページ38
近くのBAR。
私には大きな秘密が有る。それに気付いているのはごく僅かな人物だが、有る日、初対面の人物に見破られた。
店に入りBARの店主に注文を伝える。此れが彼に存在を伝える方法。
「今晩は。今日は遅かったですね。待っている間、Aさんの靴音に似た方へ反応する事早数回……」
「ごめんね。仕事が長引いて」
条野と言ったか……彼の隣の席に座る。鞄を足元に置いた時、肩に手を掛けられる。そこから探る様に手が伝い、私の手に辿り着くとそっと握られる。
「手、冷たいですよ。それに体温も。外でも外套を着なかったでしょう？」
「バレた。寒かったんだね、じゃあ今日は着てくれば良かった」
そう言った瞬間、注文の品がやってくる。
紅茶色をしたアプリコットフィズ。杏の香りが漂い、スッキリとした味が舌から脳に伝う。アルコールを摂れば体温も上がる筈だ。実感をした事は無いが。
私の姿を見て、彼は溜息を吐いた。
「貴女、何時か私の預かり知らぬ所で簡単に死んでいそうです」
「ああ、有るかも。自己管理出来ないから」
「したくても出来ない。お互い大変ですね」
茶化す様に笑う私に、困った様に肩を竦める条野。
この辺で、私の秘密をお話しておくべきか。まぁ、実際大変なのだが、私としては日常だ。
先天性無痛無汗症、という病状……というか障害を患っている。要するに、生まれつき私は痛覚と温覚が無い。
条野は、私と会った瞬間にソレを見破ったのだ。それ以来、ハンディキャップ仲間というか、そういうノリでお互いに支え合って生きている。
「でも、条野は凄いね。私よりも重いのに、難なくやっている」
「おや。今は盲目の人間に優しい世界になってきていますよ。私の職場でもね」
……彼の職業は知らないが、私に会っていない間はそれなりにやっているのだろう。表すように、彼は上機嫌に笑ってみせる。まあ、私が入る様な問題では無いのは確かだ。
一口、酒を煽って息を吐く。
「……体温、上がってきてますよ」
「本当？良かった」
「それと、先程の話題ですが」
条野も自分のグラスを傾けて、酒に口を付ける。口を離した後、私に顔を向けて笑みを深くする。
「君の方が凄いと思いますよ。僕よりも、命の危機に直結する」
頭を撫でられた。感触はある為、少し落ち着く。
「んー……普通になっちゃったからなぁ……でも、有難う」
笑ってもわからないだろうから、お礼に頬に口付けた。ハンディキャップが結んだ仲だが、私は彼を気に入っている。
オーロラ『旧双黒』※ららさんリクエスト→←ライラ『太宰治 黒の時代』
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いちご(プロフ) - ミラから来たぞおおおぉ！ に、しても評価凄いですね！Σ(ﾟﾛﾟ;) (2020年6月21日 14時) (
レス) id: 3cbabf2902 (このIDを非表示/違反報告)
モフ子 - 道化さん» 全然OKです。後見させてもらいました、兎に角好き(語彙力Maxです。 (2019年8月4日 17時) (レス) id: 7dc88695a1 (このIDを非表示/違反報告)
道化(プロフ) - 書かせて頂きました！お仕事疲れとの事なので、ちょっと絡めたお話を。ゴーゴリ「頑張った子には、ご褒美がいるよね！私は分かっているのさ！」 (2019年8月2日 18時) (レス) id: 915e79c273 (このIDを非表示/違反報告)
道化(プロフ) - モフ子さん» 了解しました！リクエスト内容は、シリーズ最新作の「恋は下心」の方に投稿させて頂きますが、大丈夫でしょうか？ (2019年8月2日 18時) (レス) id: 915e79c273 (このIDを非表示/違反報告)
モフ子 - リクエストしても宜しいでしょうか？天人五衰のゴーゴリ君っていいですか？シチュエーションは何でも構わないのでお願いします！仕事帰りに癒されたい！どうか私の我儘を聞いて下され (2019年8月2日 11時) (レス) id: 7dc88695a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：jazz | 作成日時：2019年4月26日 19時
