29片 ページ31
スースーと頬杖をついて
足を組んで椅子に座り寝息を立てるその人。
今にも涎をこぼしそうな勢いで
王という仮面を取り払った様子で無防備に眠る彼に
胸を締め付けられる思いがした
「シン」
思っていたより大きな声が出た
でも彼は気付かず眠ったまま
手を伸ばしても届かない所に座ってる
その大きな手に
逞しい腕に
触れたいのに。
体が重くて動かない
「…すぅ…すっ」
あ、涎。
口の端から零れたのが
手に触れて閉じられた瞳が薄らと開く
…どんな顔すれば。
咄嗟に目を閉じて
狸寝入りを決め込んでしまった
「……もうこんな時間か」
衣擦れの音とともに
ガタッと椅子から立ち上がる音がした
行かないで、ここに居て。
声に出せないまま
「…すぐに戻る」
さらりと髪を撫ぜた
その温もりはすぐに消えてなくなった
ドアの閉まる音を聞き届けてから
目を開けて、しばらく天井を眺めていた
武官たちの発する威勢のいい声
文官たちがせわしく走り回る足音
鳥のさえずりに
風で枝が揺れて葉がすれる音
このすべての
平穏を守っているのはシンだ。
私は彼を…殺そうとした。
この国に居てはいけない人間だ
彼は私の大切な人。
私が傍に居ると彼を傷つけてしまうから
私は此処に居るべきではない
たとえ、シンが此処に居ることを望んだとしても
それは変わらない。
ふと思い浮かんだ妙案に
シンが慌てる様子が思い浮かぶ
そうね…それなら
手紙を、おいていかなくちゃ。
彼はきっと死ぬまで私を探し続けるだろうから
そして、故郷に戻ろう。
まだ戻ってない記憶を探しに。
「楽しかった…」
目を覚ましたら記憶をなくしていた私に
みんな泣きそうな顔をして気を使って、身を案じてくれた。
ジャーファルは散歩に
ヤムライハは魔法の研究に
シャルルカンは私とシンの事をからかいに
マスルールは記憶戻すのを手伝おうとしてくれた。
ほかのみんなだってそう…
私の大切なものを、壊さない様に。
早く魔力を回復させないとなぁ…
瞼を閉じたのと同時に
目尻から溢れた涙をぬぐうこともできなくて
一筋の涙が私の顔から枕へと伝い落ちていった
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紅妃(プロフ) - 完結おめでとうございます。いつも楽しみの一つにさせてもらっていました。これからの活動も応援しています。 (2018年3月14日 9時) (
レス) id: d4608e4b4b (このIDを非表示/違反報告)
はな - めっちゃおもしろいです！続き早く読みたい。。！！夜猫さん、この小説のことわすれないで〜〜〜ヾ(･ω･`;)ﾉ (2017年1月10日 19時) (レス) id: 6a8fed615c (このIDを非表示/違反報告)
月影みこと(プロフ) - すごくおもしろいです。続きがとても気になります。応援してます！ (2016年11月21日 23時) (レス) id: 9705d14001 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜猫
| 作者ホームページ：https://twitter.com/tutimikado12113
作成日時：2016年10月11日 21時
