28片 ページ30
＿＿＿＿＿＿＿＿＿もう、やめて。
「助けて」
「見殺しに、しないで」
真っ黒な世界の中で何度も何度も繰り返されるのは
シンドバッドがレイルを刺殺し嗤う映像と
レイルが只管、私に向かって助けを乞う映像。
私の手を引いていたあの子は
なんの感情も移さずぼーっとそれを見つめていた。
目を閉じても繰り返されるその惨劇に気が狂いそうだった。
シンドバッドにとってはレイルは邪魔な存在だった。
＿＿さあ、運命を呪え。
約束したのに、その本人が弟を殺した。
＿＿＿運命に抗え。
どこからか聞こえてくる男の声と
私の手に握られてたのは黒い剣。
＿＿胸を突き刺せ。さすれば楽になれよう。
早く、楽になりたい。
その一心で黒い剣の切っ先を自分の胸の中央に充てた。
＿＿＿そのまま力を入れろ。
あの男に復讐する力をお前に与えよう。
…復讐？
＿＿さあ、早く。
違う。私は復讐なんか望んじゃいない。
＿＿アイツが憎くないのか？
憎い。でも…
目を開くとあの映像がふっと消えて
小さい頃の私…によく似たあの子が向かい合うようにして立っていた
その目は憎悪がありありと映し出されていて、
『裏切り者』
そういわれている気がした。
彼女が体を構える。
その手には黒い短剣が握りしめられていた。
そのまま私へ向かって走ってくる。
避けたくとも魔法にかかったように足は動かなかった
…助けに来てよ…シン。
目を閉じて奥歯をかみしめる。
しかし、考えていたような衝撃はいつまでたってもやってこない。
うっすらと目を開けるとあまりの眩しさに目が眩んだ。
黒が白に代わっていく、不思議な光景だった。
頭を撫でられる感触に
水の中から引き揚げられたかのように意識が覚醒する
視界の中にいるのは憎くて愛おしい。大切な人。
いろんな感情が綯い交ぜになっていて
思考がまとまらない
「＿＿＿」
私が何かを問う
シンドバッドは私をまっすぐに見つめたまま答えた。
その言葉に嘘はないと、分かった。
＿＿＿それだけで十分だった。
「私がいなければ…二人とも幸せに生きられたのかもしれないわね」
ふと口をついて出た言葉は
さっき黒い世界に居た私が考えていたことだ
「そんなわけ、あるか」
意識がもう一度沈む前に届いた否定の言葉に
左腕から枷が外れた音がした。
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紅妃(プロフ) - 完結おめでとうございます。いつも楽しみの一つにさせてもらっていました。これからの活動も応援しています。 (2018年3月14日 9時) (
レス) id: d4608e4b4b (このIDを非表示/違反報告)
はな - めっちゃおもしろいです！続き早く読みたい。。！！夜猫さん、この小説のことわすれないで〜〜〜ヾ(･ω･`;)ﾉ (2017年1月10日 19時) (レス) id: 6a8fed615c (このIDを非表示/違反報告)
月影みこと(プロフ) - すごくおもしろいです。続きがとても気になります。応援してます！ (2016年11月21日 23時) (レス) id: 9705d14001 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜猫
| 作者ホームページ：https://twitter.com/tutimikado12113
作成日時：2016年10月11日 21時
