9枚目 幕間 ページ11
「……そんなことが」
「昨年のことはバルくん達に大体聞いたでしょウ?その裏側がこの話。」
私の仕事を手伝う様子もなく、ただ彼は猫のように椅子や窓枠に転々と寄りかかりながら日向ぼっこをしていた。
転校してきてまだ日の浅い私にとっては彼の突飛な行動にまだ慣れない。
【DDD】が終戦を迎えてまた私の仕事が増えていく度、【TrickStar】の皆も比例するように仕事をが増えていった。
「そのカメラってまだあるの?」
「興味あるノ?」
「うん」
一度書類から顔を上げ、私はじっと彼を見据える。
一瞬驚いたように目を見開いたあと、すぐにいつもの胡散臭い笑顔に戻った。
「これだヨ」
どこからともなく出された黒く小さなカメラ。話で聞いた通り赤い紐が提げられていて、キラキラとしたまだ真新しいストラップがついていた。
「ソラにもらったノ。」
「へぇ、綺麗」
「ただのプラスチックなの二、少し透き通っていれば綺麗に見えるのはいささか不思議だよネ」
「今も撮ってるの?」
興味本意で言ってみれば、もう撮っていないヨ、と言われた。
その割に埃一つついていないフィルムカメラを見れば、彼がどれだけ大事にしてきた代物なのかということは一目瞭然。
私はそっと彼に返した。
「というカ、そのレポート途中じゃなイ?」
「え、あ、あぁ!」
「フフ、子猫ちゃんらしいネ」
「何度も言うけど、私は子猫じゃない……っていないし」
トン、と肩を叩かれ振り向けば、夏目くんは机に寄りかかっている。
「ちゃんと聞いてるヨ、Aちゃん」
どこかで聞いたことあるぞこの流れ。そんなことはさておき、彼は黒板の前でチョークを構えた。
「暇だったら聞いていってヨ。ボクのどうでもいい話。」
「暇でもないんだけどなぁ……」
「おっと失礼。じゃあボクが勝手に話すネ」
去年のどうでもいい話の続きを、と彼は妙に流暢な言葉を謳った。
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作者名:竜花 | 作成日時:2019年8月15日 2時