6 逃げたかったから ページ7
前なんて見ずに無我夢中で走っていた。
とにかく胸が苦しかった。
必死に涙を堪える。泣いちゃだめだ。この学校でプロデューサーになるって決めたんだから。そう言い聞かせる程に、先程の言葉が脳内でリピートされる。
"プロデューサー向いてないんじゃない"
そうだね、きっと私には向いてなかった。
コミュニケーションが苦手で、さっきだって折角スバルくんから声を掛けてくれたのに返事もしないで。結局私が頑張れなかったのが悪くて、迷惑かけてばっかりで、本当に馬鹿みたい。
堪えていた涙が溢れだす。
廊下で1人で泣いて、誰かに見られたらどうしよう。
でも止まりそうになくて。
「匿ってあげようカ」
その独特な語尾に顔を上げれば、怪しげな笑顔が私を見下ろしていた。
「Good Night、子猫ちゃん。
取りあえず人に見つからない場所にでも案内しようカ？」
差し出された手を握る。彼とはそこまで仲がいいけではないけれど、今はただ静かな所に行きたかったから。
ふと彼が廊下のある壁を押したかと思えば、言葉の通り目の前の景色は180度回転する。驚きはしたが黙って彼に手を引かれ、細く薄暗い階段を下れば、ゲーム機の散らかった実験室のような部屋に辿り着く。
「授業が終わるまではソラも来ないし、ゆっくりしていくといいヨ」
そう言って、逆先くんは私を椅子に座らせた。
「…ソラさんって、逆先くんの後輩さん？」
「そうだヨ。ユニットもボクと同じ。」
「可愛いがってる？」
「…まぁ、それなりニ…というか何でそんな事聞くノ？」
彼でも後輩を可愛がるのか。
少し意外とか思っていたら、彼は不服そうに私をみた。
「…私にも可愛がってる後輩がいてね、背が高くて所謂美男子って感じの子で、全然後輩って感じはしないんだけど…可愛くて優しい子なの」
「ふぅん…なんだか矛盾ばかりだネ」
「そうかも。私は部活は入ってないんだけどその子はバスケ部で、たまに衣更くんとスバルくんに…」
自分で言い出して後悔した。ついさっきの出来事がまたも頭を占領する。どうしてあんな事に。いつからこんな風に。考えれば考えるほど頭がぐちゃぐちゃになるのだ。
「どうしたノ」
表情こそ変わらないものの、その声音は少しだけ私を心配しているみたいだった。
だからこそ、また視界がぼやけてしまうのだ。
「ごめんなさい、少しだけ、許して。」
何も言わず彼の肩に頭を預ける。嫌がられるのを覚悟していたけれど、彼は何も言わずそれを許してくれた。
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かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年3月29日 19時) (
レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです！めちゃくちゃ楽しませていただきました！！ (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり｡さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり｡ - 完結おめでとうございます！雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました（笑）これからもファイトです！ (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：繕 | 作成日時：2019年7月31日 11時
