工藤姉は弟がキライ３【名探偵コナン】

94 ページ2

No side



【藤峰Aとその母親に関する調査報告】

親子は約1年から半年間隔で引越しを繰り返していた。

契約に何度か訪れていた不動産会社および大家、近辺で暮らしていた近所住民から任意による聞き込みを行った。



ー
ーー



「女優の有希子ちゃんも可哀想だよなぁ。」



独り言のような呟きに、近くにいた同僚たちが同意するようにうんうんと頷いた。



「義理の兄が犯罪者になったら女優業辞めざるを得ないよねぇ」

「……でも、案外そうも言えないんじゃね？」

「なんで？」

「ほら、あの娘見てみろよ。」



彼らは言われるがまま、休憩室のドアの影から賃貸の相談をしている親子を覗き見る。

母親の隣にいた、有名女優に生写しな女の子の姿に息をのんだ。



「…………わぁ、」

「こりゃあ、藤峰有希子の隠し子説は濃厚だな。」

「まてまて、母親が藤峰有希子そっくりかもしれな……うわ、全然似てない。」

「仮に親子だったとしても、あそこまで顔が似てなかったら誰も信じてくれないよな。」






被害者は全国各地にいた。





「アンタら見てるだけで頭がどうかしちまいそうだ！！頼む…！他をあたってくれ！！」

「すみません…！すみませんでした…！！」



アパートの前で平謝りする母親を、少し離れた道端で近所に住む女性たちが集まり様子を見ていた。



「あの奥さん、藤峰有希子のお姉さんなんですって。」

「っえ！じゃああれがテロを起こした犯人の家族！？」

「そうなのよ。私もビックリしたわ」

「あのアパートの大家さん、親孝行にってプレゼントした旅券持って出て行った先でお母さんがテロにあっちゃったんですって。」

「あら……それは…」



不備そうな視線がアパートの大家へ向けられた後、娘の手をひき逃げるように去っていく親子の後ろ姿へ注がれた。



「娘さんや奥さんには関係ないって思いたいけど……ねぇ？」

「奥さんだって、付き合ってた時に分からなかったのかしら。散々悪事働いた挙句に人を大勢殺したのよ？」

「普通なら気付くでしょうね。」

「奥さんも平凡そうに見えたけど、実は…ってやつかもよ？」

「でも娘さんは可哀想よねぇ。子は親を選べないもの」

「分からないわよ。ほら、犯罪者も子供の頃は普通だったとか言うじゃない。もしかしたら遺伝してるかも」

「た、たしかに…」

「あまり近付かないよううちの子に言っておかないと…何かあった時じゃ遅いわ…！」

「ほんと、怖いわねぇ。」

95→←あらすじ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す