101_ユダの接吻 ページ9
ジンside
発砲音ではなく、軽い金属音だけが虚しく響いた。
「……なん、で…、私は」
俺かスコッチ、どちらか一方を撃てと命じられた通り引き金を引いた少女。
だが、その手から銃弾が飛び出す事はない。
最初からその拳銃には弾が込められてはいなかったからだ。
向けられた銃口の先にいたのは──
──スコッチ
「ックク!これが答えだァ藤峰A!!」
拳銃を向けた張本人である少女は、目の前の事実に驚き動揺していた。
はじめ少女は、俺の心臓に照準を合わせていた。
だが、撃つ直前になってスコッチの方へ銃口を向けたのだ。
銀色の瞳が、今の状況を理解する事が出来ずに揺れている。
「お前は今、自分を痛め付けた俺では無く無害だったスコッチを見捨てる事を選んだ。つまりA…お前は親しい人間より、命を直接救った者に対して逆らえねェ事になる。…この意味分かるか?」
少女の『“命”への執着心』は異様だ。
だが、それは他人に対してだけでは無い。
目の前で命が消える事を異常に恐れているが、それと同時に自分への脅威となる人間には平気で攻撃できるという矛盾を持っている。
つまり、『自分の“命”』も執着する対象の一つなのだ。
「お前は、自身の命を救済した人間には並々ならねェ忠誠心を持つ」
「忠…誠心…」
少女の持っていた銃を取り、弾をこめる。
「お前の好きなように痛めつけてみろ。」
「兄さん!私はそんなの…ッ、」
俺が放った銃弾が、少女の頬を掠めた。
「……命令だ。撃て」
少女とスコッチとの距離はおよそ2m
素人が目をつぶってでも当てられる距離だ。
「Aさん、分かっているとは思いますが、彼には聞きたい事があります。…ほどほどにしといてくださいね。」
「バーボン、テメェは黙ってろ。」
いつまでも撃たない少女の足下へ銃弾を撃ち込めば、小さな肩がひくりと縮み上がった。
「代わりにお前が死ぬのなら構わねぇが?」
「…っ、」
「嫌ならさっさと撃て。」
藤峰Aは、スコッチへ銃口を向けた。
先ほどと同様に小刻みに震えている少女のことを、組織を裏切り古巣と少女に裏切られた男は何を思うのか。
考えるだけで笑いが込み上げてくる。
震えが止まらないまま、少女はベレッタのトリガーを引いた。
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仮面タロウ(プロフ) - 深月さん» ですよね!!!夜の美術館とか似合いそうだなぁと思って書きました!いつかは夜のシチュエーションも書いてみたいですね(^^) (2022年8月21日 11時) (レス) id: 2292ab7783 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - ジン……!!!!休日に一人で美術館巡っているとか可愛すぎます!そして、わかりみが深いです、ジン美術館好きそう(笑)続き楽しみにしています。 (2022年8月16日 21時) (レス) @page44 id: 8da4958f2c (このIDを非表示/違反報告)
仮面タロウ(プロフ) - 小宮瑠璃さん» 嬉しい…!ありがとうございます!! (2022年7月26日 22時) (レス) id: 2292ab7783 (このIDを非表示/違反報告)
仮面タロウ(プロフ) - あお。さん» コメントありがとうございます!現在元気に3股してます!笑 これから4になるのか、もっと増えるのかは乞うご期待!! (2022年7月26日 22時) (レス) id: 2292ab7783 (このIDを非表示/違反報告)
小宮瑠璃 - 仮面タロウさん» めっさ楽しみですぅっ!!完結まで私はこの作品を推し続けます!! (2022年7月25日 22時) (レス) id: dbce0c6b80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:仮面タロウ | 作成日時:2022年6月28日 12時