工藤姉は弟がキライ３【名探偵コナン】

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Aside



ジンさんのプライベートは、以前から謎だった。


彼の自宅を知るのは組織でもウォッカさんのみで、比較的仲の良さそうなベルモットでさえも知らない。

季節を問わず着込む真っ黒のコートを羽織り、酒とタバコで生きているような人

そんな彼とばったり会ったのは、都心から2時間も離れたドマイナーな美術館

予想外すぎる展開に驚きを隠せない。


一方のジンさんはと言うと、三白眼がさらに見開かれたまま固まっている。

たぶん、私も同じような顔をしているだろう。


思い返せばジンさんはよく言葉選びに詩的な表現をしていた。

もしかしてそういった美的感性がお有りで休日は美術鑑賞を…？

ッア、どうしよう、すごい納得できた。


ちなみに今のジンさんは私服姿で、いつもの黒コーデ(笑)ではない。

目立つ銀の髪はひとつにくくられ横に流し、鋭い目付きは伊達メガネで緩和されていて、ただのイケメン外国人になっていた。

パリコレかよ

と思わずツッコミたくなったが、そこは歯を食いしばって我慢した。



「……」



しばらく2人して固まっていたが、先にジンさんが何事も無かったかのように視線を絵に戻した。

……うん。見なかった事にしよう

彼の存在を無に帰し、目の前にある壁画に意識を向ける。


私のお目当ての絵は、ピカソの『ゲルニカ』を原画にした壁画。


この絵はピカソ本人が指示して作らせたもので、世界に3点だけ存在している。

1作目はニューヨークの国連本部に、2作目は大戦末期に激しい戦闘が繰り広げられたフランスとドイツの国境付近にある美術館に、
そして3作目がこの美術館にある。

なんでここに所蔵されてるのだろう、謎である。


『ゲルニカ』は戦時中スペインで行われた無差別空爆をモチーフに描かれた壁画だけあって、空爆がまさに今起こったかのような生々しい恐怖がこの空間を包んでいる。

今にも阿鼻絶叫が聞こえてきそうだ。


今のジンさんの見た目では、風景画を眺めていそうだけど、黒を纏った彼を見慣れている私からすると、この絵で立ち止まるあたり彼らしい。

何時間でも見ていられそうだが、あまり時間をかけると他の絵が見られなくなりそうだ。

そう思い、次の順路に進もうとしたら…



「「……」」



ジンさんとほぼ同時に歩き出してしまった。

もう、どうにでもなれ

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