第1話 ページ1
桜の蕾がさき始めた春休み。
誰もいないはずのテニスコートに1人、汗水垂らす人がいた
「これはここ、ボールは入口の近くに置いておかないと…」
男子テニス部マネージャー、酒々井涼。
彼女は明日からの男子テニス練習再開の準備をしていた
「あとは…結構あるな、午前中で終わるのか？」
それもそのはずだ。普通のテニス部より遥かに多い立海男子テニス部のマネージャーがたったの3人。3人で切り盛りするにはかなり厳しい
しかし、2人は病気になったから何とかで手伝えないとか…仮病は別の日に使ってほしいと思っているであろう涼。
「泣き言言っていても仕方ないか。さ、再開再開！」
ベンチから立ち上がると、涼の名前を呼ぶ誰か。大きい声にびっくりした涼は振り返った
「涼先輩ー！！ 何でここにいるんすか？」
「赤也と、柳？ 練習は明日からだぞ」
犬のように尻尾を振りながら涼の所にくる様は可愛いと少し思う。柳は相変わらずだが
「赤也が練習したいと言ってな、練習相手がいないとつまらないだろう」
「なるほど。でも、まだ片付け終わってなくてな…どこかで暇つぶしでもしててくれないかな？」
「じゃ、じゃあ俺手伝うっス！」
「いいのか？ いや、選手達にこんな雑用は……」
「いいから！ 3人でやった方が早く終わるッスよね、柳先輩？」
「という事だ涼。大人しく手伝われてくれ」
「…いつもありがとう、二人とも」
午後まで掛かると思われていた片付けがあっという間に終わった。その後のテニスコート内はラリーの音で埋め尽くされていた
(見ないうちに二人とも髪伸びたな……目に髪かかって邪魔じゃないかな？ 後で言ってみよう…)
「柳先輩、ちょっといいスカ？」
「あぁ」
「涼先輩、俺のこと見てません？ 何考えてんスカね…」
「…少なくとも赤也の事は考えてるんじゃないか？」
「マジすか！？ あっいや、何でもないっス！！」
(柳と赤也は仲いいな…明日からの練習楽しみだ)
「赤也、そろそろ休憩するか？」
「りょ、了解ッス…」
球を打つたびに柳の球がどんどん重くなっていくものだから、赤也は少しへばってしまう。
(最近ずっとゲームしてたからな…そろそろ真面目に練習しねぇと)
柳の視線に気づいた時には赤也はもう遅かった。ペットボトルの冷たさが頬に来たものだから、赤也は叫ぶ
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作者名：夢現日 | 作成日時：2019年1月6日 2時
