【色松】来世前世と逢えたなら (ページ4)

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カ「ま、待ってくれ！」

立ち去ろうとするシスターを、吸血鬼が止める。
シスターは不機嫌そうに、「何だよ」と凄んだ。

カ「一松、君は放っておいたらこのまま自害するつもりだろう？」

一「…当たり前だろ。
元々お前が来なきゃ、死ぬつもりだったんだから」

吸血鬼は「そうか…」と落ち込み気味に下を向いた。
そんな吸血鬼に苛立ちを覚えたらしいシスターは、ゆっくり其奴に近づいた。

一「おい、お前に俺の人生指図される覚えねぇよ。
ウゼェんだよ、偽善者野郎が。
神だって結局はそうなんだ。助けようなんて顔して、突き落とす」

その言葉に其奴は勢いよく顔を上げた。
そのせいで、其奴の頭が彼の顎を直撃した。

少しの間悶絶していたが、やがて怒りが頂点に達したのだろう。
シスターがキレた。

一「なんッ…なんだよお前はぁ！！クソ野郎が！」

カ「その呼び方は気に食わん！が、今はあえて目を瞑ろう！
一松、君は今『助けようなんて顔して』と言ったな…？

お前は神に、会った事があるのか…？」

目を輝かせ訊く吸血鬼に、驚いたのはシスターの方だった。

一「…会った事があるのか、って……無いのか？」

“一松は、どうやら今迄出会ったどの人間とも違うようだな”

シスターが逆に訊き返してくるので、「ある訳無いだろう」と応えれば、
「嘘…」と彼は力が抜けたように、その場に座り込んだ。

カ「大丈夫か…？」

座り込んだシスターに合わせ、吸血鬼もしゃがみ込む。
顔を覗き込めば、顔面蒼白とはまさにこの事だろう、という程に彼の顔は真っ青だった。

「嘘だ…そんな…」と呟きながら震える少年に、吸血鬼は少しの戸惑いを見せつつ、
外から聞こえた物音には敏感に反応した。

カ「…ゆっくり話を聞いてやりたいところだが、俺も追われている身なのでね。
このまま此処にいれば、君を人質にされかねない。

…悪いが、ついて来てもらうぞ」

そう言うなり吸血鬼は、震えるシスターを抱え上げる。
指をパチンと鳴らせば、蝙蝠達が現れた。

カ「頼んだぞ」

蝙蝠にそう言うと、其奴はシスターを抱えたまま裏口から出て森を走った。

通常なら蝙蝠となって飛べるが、シスターを抱えてる今走るしかないのだ。

シスターは未だ放心状態で、「じゃあ、あの時の……」と呟いた。
その声は、走っている其奴に聴こえる事はなかった。