伝説を背負う者。 ページ10
皆々、眠りにつき始める時間。
人の１日というのは長くもあり短くもあり不思議なものだった。
日によって感じ方が違うというのは、新しい発見だと最近思った。
部屋のいろんなところを見て回っていると、ふと、まだ眠れていない人がいることに気づいた。普段ならすぐに暗くなっているはずの部屋にはまだ淡い光があった。窓からそっと上がり込んで、なんで起きているのかを見ると、彼は古いグローブを不安そうな顔で見つめていた。
置いてあるカレンダーには今日までばつ印がひかれ、まだ引かれていない隣のところには、何か文字が書いてあった。
うまく読めないが、多分大事な用事があるのだろう。
大切な用事の前に緊張しちゃったりするのは人間も天使も同じらしい。
時々神様の前に戻らなきゃいけない時があるが、その時は今までちゃんとやってこれたかどうか確認されるためすごく緊張するのだった。
多分彼も今同じような感じだろう。
明日は大事な試合だ。ちゃんと守らなきゃな。
そう言う彼の顔色は相変わらず暗い。
彼はいろんなところで見かけた。様々な少年達が彼のことを知っているようだった。
彼はきっと、私たちのところの神様みたいな感じでいろんな人から愛されている。
だからたくさん注目される。
それがどれほど重いものなのかは分からない。
けれど、彼がそれを乗り越える人だと言うことをきっと誰もが信じてる。
だから、私も祈る。
「あなたたちに勝利の女神が微笑みますように」
重ねた手をそっと解き、柔らかくベッドに腰掛ける。きっと大丈夫。彼はここの神様みたいなものだから、私も祈ったし、大丈夫だ。
自分にも言い聞かせるみたいにしてそっと息を吐いた。
彼を見ると、顔色は明るくなっておりやる気に満ちているような感じがした。ああ彼も頑張ろうと思ってくれたのなら良かった、そう思った。
ふとその時、何故か寂しくなった。
妙な寂しさが疼いて、私は思わず首を傾げた。
「なんで私、寂しいんだろう」
自分でも分からない感情の変化が途端に怖くなって、私はすぐにその場を離れた。
おかしい、今までは大丈夫だったのに。
気にしないで入られたのに。
私はしばらく走った。
走って、走って、走って。
時間をおいて少しの間目を閉じていた。
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作者名：匿名の人。 | 作成日時：2019年12月6日 22時
