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 焦りを浮かばせるふたりだったが、部屋からは出てこなかった。


 彼らなりの、気遣いだろうか。















「なに、急に」



 【戻った美羽】に驚き、少女のほうを向いた。



「【泉】は心のそこから思ってるんじゃないの、『戻りたい』って。心の底では____」



 ____少女は語る。



 ____大切なもののために、大切なひとのために、語る。



 ____けれど......



「逆にあんたは、まだ夢見てるわけぇ?」



 泉が、美羽のことばを遮(さえぎ)って、ぶっきらぼうに聞いた。



「うん、見てるよ」



 返事は即答だった。



「【あのひと】はきっと、戻ってくる。今は、その準備をしているだけ」



 ____少女は語る。



「きっと、前みたいに一緒にいられるの」



 ____語る。



「そして、また一緒に見るの」



 ____語る。



「【あのとき】に止まってしまった、夢の続きを」



 ____語る。















「くだらない」



 ____けれど



 ____それでも、少女のことばは誰にも届かない。



 ____泉にも、【あのひと】にも。



「......ぇ............」


「勝手にしなよ、『ひとり』で」


____「今までみたいにさ」____



 ____少女を突き放す。



「俺も、【あいつ】も......誰も、そんなこと望んでないよ」



 ____遠く、



 ____遠く。



 ____遠い彼方へと。



 ____少女のことばは届かない。



 ____少女の声は、もう、届かない。



「私は......」



 顔を俯かせ、胸の前で両手を組み、ことばを紡(つむ)ぐ。



「私はまた、【あのとき】のように......」















 暗い



 暗い



 暗闇のなか





 手を伸ばす



 なにも、ないところへと





 声を発する



 だれも、いないところへと















「私は、ただ......【あのとき】のように......【レオ】の横にいて、笑っていたいだけなの......。

 隣に、いてほしい、だけ......っ」



 胸が、いたい。


 くるしい。


 せつない。


 【あのひと】を思うだけで、こんなにも、胸がつらいの。















 美羽は脱力したのか、廊下に座りこんでしまった。


 そんな彼女を心配して、今まで黙って部屋のなかにいた真と真緒が飛び出した。


 美羽の傍に駆け寄り、支える。



「......またね、ゆうくん。俺はいつでも待ってるから」



 そう告げて、去っていった。



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作者名:白銀桜夢 | 作成日時:2018年8月9日 18時

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