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phrase42 ページ44

「......もういいわ。でも、この手、離してもらえないかしら。場所はわかっているわ、あなたよりもね」

「あ、そっか」


 恐らく今の今まで、彼女が先輩だということを忘れていたのだろう。

 しかし、彼は手を離さなかった。

 むしろ、先程より力がこもっている。

 ふと、スバルは何かを思い出したのか、Aに声をかけた。


「先輩は『プロデューサー』なんだよね?」

「ええ」

「『プロデューサー』って、衣装作りも作ったりできるの?

 ほら、俺たち、『ユニット』を結成したばっかりだからさ。専用の衣装がないの、憧れの『ユニット』専用衣装〜♪」


 まとまりのない、スバルの説明。


「安心して、今大体の構成が出来上がってるわ。また後日、寸法を行うから」


 さすが、手慣れている。


「おお〜! 出来たら見せてね〜☆」

「もちろんよ。

 ......スバルくんは、キラキラしたものが好きなのよね?」


 今度は、Aがスバルへ質問を投げ掛けた。


「そうだよ! キラキラしたものが大好き〜☆ とくにお金が一番〜♪」

「...そう」


 聞いて、どうするのか。

 彼女は何も語らなかったが、きっと何かに使うのだろう。

 スバルは気にもとめていないようだ。

 やはり馬鹿なのだろうか。




 ほんの少しだけ、無言で歩いた。

 スバルが喋らないと、本当に静けさが身に染みて実感できる。

 彼女は互いに無言でもあまり気にしないのだが、彼のほうは むずむず と肩を揺すらせて、彼女のほうを何度も見てくる。

 まだ、手は繋いだまま。

 暗い海を、ただ一枚の板きれに身を委(ゆだ)ねて、2人ぼっちで漂流するみたいに。


「......あはは。俺、昔からどうも苦手でさ。暗くなったり、悩んだり、困惑しちゃったりする感じが。よくわかんないし、共感できない」


 嘘くさいほどの笑みを消して、スバルは独り言のように呟いている。


「俺、どっか人間として欠けてるんじゃないかって......。喜怒哀楽のどっかが、すっぽり抜けてる感じがする。それで、周りをよく傷つけちゃうんだよね」


 Aは相づちを打つことも、何かすることもなく、ただただ静かに、彼の言葉を聞いていた。

 彼の、次の言葉を待っている。

 誰かに聞いてほしいと思って発せられた、大事な声を。

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- この作品の続編ですが、最新作はオリジナルフラグが外れておりません。違反行為ですのでちゃんと外して下さいね (2018年8月9日 18時) (レス) id: 93bb7a0f46 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白銀桜夢 | 作成日時:2017年10月29日 17時

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