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翌日、早朝。
夢ノ咲学院の一角、軽音部の部室に____野獣の吠え声のようなものが響いていた。
早朝だと言うのに、窓に暗幕ご降ろされており、ほとんど真っ暗闇だ。
まるで、平穏な朝を迎えたこの世界に、真っ向から反旗を翻すみたいに。
それだけでも異様なのだけれど、なぜかドラムやギターなどの楽器の隙間に、棺桶が置かれている。
そんな、どこかで背徳感という意味不明な景観のなか、響きわたる野獣の吠え声の張本人である晃牙が喚(わめ)いていた。
「くそおぉぉ! 思い出しただけでも腹が立つ! 昨日の説教! 空手部の鬼龍紅郎! 生徒会...!」
ギターを激しく演奏しながら、自身に溜まっている鬱憤をどうにか取り除こうとする晃牙。
「うわあ、荒れてるね〜大神先輩」
「くわばらくわばら。触らぬ大神先輩に祟(たた)りなし」
まったく同じ声が聞こえた。
声の主は、荒れ狂っている晃牙を遠巻きに見守り、暗幕の降ろされた窓際で仲良く並んでいる双子だった。
男の子にしては長い、橙色の髪に黄緑色の瞳。
初めに喋ったのは、兄、葵(あおい)ひなた。
夢ノ咲学院アイドル科1年A組、部活動は軽音部、所属ユニットは2wink(トゥウィンク)。
次に発したのは弟、葵 ゆうた。
夢ノ咲学院アイドル科1年B組、部活動は軽音部、所属ユニットは2wink。
間違い探しのように、ほんの少しずつ差異がある。
例えば、ヘッドフォンの色...ひなたが桃色で、ゆうたが水色。
あと、わずかな表情の差だろうか。
学年ごとに色分けされた制服のネクタイは赤色。
1年生であるため、当然のことながら晃牙を『先輩』と呼ぶ。
「どったのアレ? 大神先輩、何かあったのかな」
「詳しくは知らないけど『B1(ビーワン)』で派手に負けたらしいよ?」
ひなた、ゆうたの順に言う。
小声で会話していたのを耳聡(みみざと)く聞きつけた晃牙は ガンガンッ と壁を蹴りつけながら
「あぁん? 負けてね〜よ! 没収試合だあんなもんっ! 中途半端で終わったから鬱屈して仕方ね〜んだよ!」
と噛みつくように吠えた。
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、 - この作品の続編ですが、最新作はオリジナルフラグが外れておりません。違反行為ですのでちゃんと外して下さいね (2018年8月9日 18時) (レス) id: 93bb7a0f46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白銀桜夢 | 作成日時:2017年10月29日 17時