#36 ページ36
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「お、おはよう！」
朝の昇降口で眠そうなエイジに声を掛ける。
「おはよ」
目が合って、返事をしてくれた。
ただそれだけですごく嬉しくなった。
いつものことなのに。
昨日、自分の本当の気持ちに……、
エイジが好きなんだということに
気付いてから、変に意識してしまう。
本当はもっと前から気付いていたのかも。
でも、そんなわけないって
想いに蓋をして目を背けてきただけ、
だったのかもしれない。
「────で、結局、
昨日のそらの“話”って何だったの？」
その質問に心臓が跳ねた。
正直に言うべきだろうか。
でも……。
「えと……、そ、相談！ 恋愛相談！」
刹那迷ってから
私は咄嗟に嘘をついてしまった。
色々と勘繰られそうで怖かったから。
でも強ちすべてが嘘という訳でもない。
「恋愛相談？」
エイジが訝しむような視線を寄越す。
「う、うん。彼女と復縁する、かも」
すべてを見透かされそうで
言いながら、逃げるように目を逸らした。
「はぁ？
そんなことAに相談するとか
あいつ本当に無神経極まりない」
その言葉に心が複雑に痛んだ。
怒りの矛先を向けられたそらに
申し訳なく思う。
「さっさとやめて、他の人好きになれよ」
また心臓が跳ねた。
先ほどとは違うふうに。
何て返せばいいんだろう。
今まで、どんなふうに喋ってたっけ？
「……まぁ いいや」
エイジは反論しない私を訝しく思ってか
軽く首を傾げたがそう言うと前を向いた。
(私、意識し過ぎ……)
今までだって何度かそんなような事を
エイジに言われたことがある。
前みたいに、躱せばいいだけ。
なのに、上手く言葉が出てこない。
「！」
そのとき、ふと彼の背後にそらの姿が見えた。
千夏ちゃんも一緒だった。
よりを戻したのかは分からないけれど
前ほどまでとはいかなくても
二人の表情は楽しそうで
(良かった……)
私は小さく安堵の息を漏らした。
─────もう、心が傷つくこともなかった。
「あ、」
私の視線を辿ったエイジが
首を巡らせ彼らの姿を認めた。
それから気遣うように私を見る。
「……平気だよ」
彼には言えていない。言えない。
私が好きなのはそらじゃない、
なんて言える筈がない。
だからせめてそう言うしかなかった。
「俺が平気じゃない」
そう言った彼は
そらと彼女の方に足を向けた。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年11月25日 1時
