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人を殴る音が教会に響く。

そう。『殴り合い』ではなく『殴る』である。

タケミっちくんは果敢に大寿に立ち向かうものの、それはどう見ても一方的なものにしか見えない。

痛いはずだ。これは実体験なので間違いない。それなのに、何度も何度も大寿に立ち向かっていく。

さすがの大寿も殴り疲れたのか、何発殴らせれば気が済むんだと息をきらしてる。

タケミっちくんの顔は大寿から重点的に殴られまくっていたためもう原型をとどめていない。
おまけに至るところから血を流している。

このままでは本当に彼が死んでしまう。

「大寿…お前を倒して、黒龍をもらう!!」

そうわかっているのに彼を止められないのは、やっぱりどこかで確信に近いものを感じているのだろう。

―――タケミっちくんは負けない

もちろん、『黒龍をもらう』と宣言してもすぐに殴り飛ばされていた。
そして、またしてもタケミっちくんは起き上がる。

「まだまだぁ!」
「やめろよタケミチ…。」

「お前は!何も変えられねぇんだよ!!」

「あ”ああああ!!」

その姿には、畏れすら感じさせられた。

「……違ぇよ八戒。変えれねぇのはお前だ。」

私もユズも思わず体を強張らせる。
タケミっちくんは、八戒の嘘に気づいてるんじゃないかって。

本当に、末恐ろしい

「もういいよタケミチ!!マジで死んじまうぞ!!」

千冬が叫ぶも、タケミっちくんは振り向かない。

また大寿に殴りかかる。

そしてついに、その拳は大寿の顔面に叩き込まれた。

「痛くも痒くもねぇ……っ!?」

「え!?」
「大寿に、膝つかせた……」

あのタケミっちくんが………なんとかするだろうとは思ってたが、ここまでとは正直思わなかった。

しかし、タケミっちくん自身は膝をつかせた大寿には見向きもせず八戒に向き直る。

「万が一、未来を変えられる命をかける価値はあるだろ?」

「八戒、頑張ることは辛くねぇよ。一番辛いことは、」

―――孤独なことだ

ボロボロのその顔に、優しい笑顔を浮かべながらそう告げる。

その口ぶりは、まるで孤独になったことがあるような感じがして、妙に説得力があった。


「何でも話せよ、八戒。俺ら、友だちだろ?」

それを聞いた八戒は、涙声で助けを求めた。

「タケミっち……俺を…助けてくれ。」

初めて、八戒が私たち以外に救いを求めた。

自分の弱さを、認めた。

「任せろ、八戒。」

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Moon(プロフ) - こんにちは(*ˊᵕˋ*)コメント失礼します🙇‍♀️めっちゃこの物語良き過ぎます(๑•̀ㅂ•́)و✧更新されるのを楽しみにしています(*^^*)🎵𓈒𓏸 (2023年2月3日 17時) (レス) @page43 id: b2ea47ad96 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - あ、八戒固まった、このシーン好き! (2022年11月6日 19時) (レス) @page18 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - あ、これって、あの短編にあったシーン! (2022年11月3日 13時) (レス) @page11 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 場地さんそのセリフ!!!夢主、鈍感だよって、ハロウィンのは大泣き場面やぁ…… (2022年10月30日 22時) (レス) @page7 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
巫缶(プロフ) - 違う!そういう意味じゃない!(多分) (2022年10月30日 21時) (レス) @page7 id: 926dc0c43f (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2022年10月28日 16時

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