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あっちこっちから殴り合いの音が聞こえてくる。

千冬と金髪。タケミっちくんと黒髪。
千冬もタケミっちくんも苦戦している。

「久しぶりだな、二人で組むのは。」

そして、三ツ谷、八戒と大寿が向き合う。

「八戒、大丈夫だ。お前は大寿より強えぇ!!」

…………いや、違う。私が知ってるかぎり、八戒は一度として大寿に逆らったことなんてない。
幼い頃はいつもユズと私の陰に隠れてたし、今もユズはボロボロなのに八戒は痣一つない。

八戒はずっとずーっと守られてきた立場の人間だ。
言い方は悪いが、そんな八戒が大寿やユズよりも強いとは思えない。

別にそれが駄目なこととは思ってない。八戒を庇ったのは私とユズの勝手な行動だ。

文句はない。理解もしてる。納得はしないが。

「クッ……はっか、」
「ユズ。」

でも、これくらいの手出しくらいはさせてよね。

「紬…」
「ユズ……置いて、いかないで?」

ユズは重傷の私を放っといてまで大寿に立ち向かったりはしないだろう。
今回ばかりは八戒はユズを頼れない。悪いね、八戒。

予想通り、ユズは私をギュッと抱きしめ直した。

「行くぞ、八戒!」

三ツ谷が大寿に走り向かっていく。だが、やっぱり八戒は動かなかった。

「……八戒?」
「…ごめん、タカちゃん。」

可哀想なくらい震えちゃってる。

大寿も予想通りだったようで、ひとしきり笑ったあと三ツ谷を殴り飛ばした。
タケミっちくんも千冬も同じく殴り飛ばされる。正直、もうみんな限界だ。

ついに八戒は最終手段に出た。

「大寿ぅぅ!!!!」

短刀を手にし、大寿に向かっていく。

「八戒よしな!!」

ユズが叫ぶも八戒は止まらない。

だが、ゴッという鈍い音ともに八戒の動きが止まった。

「わかんねぇのかよ、八戒。こんなことしたらお前、どうしようもない奴になっちゃうんだぞ!?」

タケミっちくんが頭突きして止めたのだ。

どうしようもない奴、か……私たちも危うくそんな『どうしようもない奴』の仲間入りをしてしまうところだった。

「こんなんじゃねぇだろ、立ち向かうってことは!」

………またしても、思うよ。

「立ち向かうっていう事がどういう事か、お前に見せてやる!!」

君は本当に真ちゃんに似ている。

「あん?まだ懲りねぇのかクソガキ。」

「『まだ懲りねぇ』だと?

それだけが取り柄なんだよ。」

その背中は、無謀なことをしている彼を止めることもできないくらい、強い信念を宿らせていた。

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Moon(プロフ) - こんにちは(*ˊᵕˋ*)コメント失礼します🙇‍♀️めっちゃこの物語良き過ぎます(๑•̀ㅂ•́)و✧更新されるのを楽しみにしています(*^^*)🎵𓈒𓏸 (2023年2月3日 17時) (レス) @page43 id: b2ea47ad96 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - あ、八戒固まった、このシーン好き! (2022年11月6日 19時) (レス) @page18 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - あ、これって、あの短編にあったシーン! (2022年11月3日 13時) (レス) @page11 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 場地さんそのセリフ!!!夢主、鈍感だよって、ハロウィンのは大泣き場面やぁ…… (2022年10月30日 22時) (レス) @page7 id: 1c08a873e8 (このIDを非表示/違反報告)
巫缶(プロフ) - 違う!そういう意味じゃない!(多分) (2022年10月30日 21時) (レス) @page7 id: 926dc0c43f (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2022年10月28日 16時

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