傷のついた少女【鬼灯の冷徹】 (ページ13)

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白澤「店員さん話終わらないなー……」

でも試着してちゃんと選んだ方が良いしなあ。

白澤「しょうがない。僕が着せてもいい？」

と、彼女に聞いた所で返事は無い。

白澤「服を脱いでもらえる？」

ゆっくりはっきりとした口調で話しかけると、今のはなんとか通じたようでAちゃんは着ている唐装束を脱ごうとする。

───嫌がる反応を少しも見せないなら、いいか。

唐装束を脱いでもらって、長袖シャツも脱いでもらうと、驚いた事に上半身は下着もつけずこれ一枚だった。

え、絶対寒いでしょ。現世って今秋じゃなかったっけ？

A「……」ゴソゴソ

白澤「……」フイッ

思わず目をそらす。

僕、何緊張してんだろ。超プレイボーイの僕が何今更緊張してんの。

白澤「………」

A「……………？」

白澤「ん？脱いだ？あ、えっとね、じゃあまずこれを羽織って………」

すごいギクシャクしながら着物を着せる。

だって試着室っていうすごい狭い空間に２人っきりだよ！？それだけでも緊張する！

Aちゃんは何の恥じらいも見せずに振る舞ってる。

僕だけバカみたいに赤くなってる。

ああ～……早く着せてしまおう。

白澤「は、はい。出来上がり」

僕が選んだのは、淡い黄色に端の方に少しだけ花の模様があり、襟が薄い緑色で帯が水色の着物。

白澤「よく似合ってるよー。サイズもぴったりでしょ？」

A「……」

白澤「んー、この服、気持ちいい？」

A「…」コクッ

白澤「良かった。じゃあ買おう」

僕が「買おう」と言うと、Aちゃんは首を横に振った。

A「おかね、ない。」

白澤「いいのいいの。僕が買うから」

彼女にそう言って、着物を着せたまま話の終わったらしい店員さんの所に連れて行ってお金を払った。

白澤「これで服も用意できたね」

A「ありがとう、ございマス」

白澤「うん」

白澤「え”！？」

え、え、え？今ありがとうございますって言った？

ほんとに必要な用事以外まだ話せないのかと思った…………。

お礼もちゃんと言えるのか………。

白澤「えらいね、Aちゃん」

彼女の頭を撫でた。相変わらず無表情だけど、やっぱりこの子は可愛い。

……………

今、Aの真っ暗な心の中が何故か一瞬だけ小さく光った事をまだ誰も知らない。