＊帰ろう？ ページ9
そんなことがありつつ、初日から賑やかな一日が過ぎていった。
朝からホント、驚くことばっかりだったぜ。
憧れの龍也さんが、俺のクラスの先生だったこと、那月までここに入学してたこと。
そして何より、あの大人気アイドルHAYATOの双子の弟が、このSクラスにいたこと。
確か、一ノ瀬 トキヤって名前だったっけ……
兄貴と違って、取っつきにくそうな奴だったけど……
でも、何より嬉しかったのは、もう会えないと思ってたAと再会できたこと。
あいつも成長してるから、見た目とかいろいろ変わってたけど、でも、ほんの少し見せた笑顔は、あの時と同じままだった。
これから、また一緒にいられるんだな……
−−−ボスッ
翔「うおっ！？」
そんなことを考えていると、突然頭に重いものが乗ってきた。
なんか、朝も同じことがあったような……
レン「レディを待たせるなんて、感心しないね、おちびちゃん？」
翔「おちび言うな！！てか、レンもAもいつからいたんだよ！！」
レン「俺は今さっき。けど、レディはもっと前から、おちびちゃんを呼んでたみたいだよ？」
そう言って、俺の机を指さすレン。
そこにはいつもより大きな文字でいろいろと書かれたノート。
『帰ろう？』
『ねぇ、見えてる？』
『ねぇ』
『ねぇってば』
ほんとに何回も呼んでた。文字で。
翔「わりぃ、ボーっとしてて気づかなかった」
俺がそう言うと、Aはため息をついてトントンッとノートを指さした。
そこには『帰ろう？』の文字。
翔「おう。って言っても、女子寮と男子寮じゃ方向違うぞ？」
そう言うと、何処か恥ずかしそうに赤くなって、ノートに何かを書き込むA。
『途中まで。嫌ならいい』
翔「嫌じゃねぇよ！！……じゃあ、帰るか。途中まで」
ちょっとからかうようにそう言うと、一瞬むくれたような表情をした後、何処となく嬉しそうな表情をした。
ほんと、この笑顔だけは変わんねぇな。
控えめな笑顔だけど、本当に嬉しいってちゃんと伝えてくれる。
それに……
レン「ほらおちびちゃん。モタモタしてると、俺が送っていっちゃうよ？」
翔「だからおちび言うな！！ほら、行こうぜ？A」
偏見だけど、レンが言うとなんかやましく聞こえるため、俺はAの手を取ってそそくさと教室を出た。
そのとき、横目にAがレンに手を振っているのが見えて、ほんの少し、胸が痛んだ……
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作者名：十九 雷音 | 作成日時：2017年4月23日 1時
