＊さおとメロンパン ページ7
翔「おい、大丈夫か？」
昼のラッシュ真っただ中に突っ込んでいったため、購買は最早戦場と化していた。
なんとか俺はパン二つと飲み物を確保したものの、Aは小さな牛乳パック一つが精一杯だったらしい。
顔、真っ青になってるし……
ひとまずできるだけ人の少ないところで休ませたほうがいいと思い、食堂ではなく、中庭でお昼を取ることにした。
大分顔色が戻ってきたとはいえ、まだちょっと具合悪そうだな。
翔「悪い、無理させちまって……食えそうか？」
そう声をかけてみたものの、見ての通り戦利品は牛乳パック一つ。
仮に元気でも、食う物がない。
仕方ねぇな。
翔「ほら、これ。お前、それ以外なんも取れなかったんだろ？」
そう言って、俺は自分が買ったパンを一つ、Aに差し出した。
Aもキョトンとした表情をしている。
翔「学園内人気��1、さおとメロンパンだってさ！！食ってねぇからわかんねぇけど、多分上手いぞ！！」
そう言っても、Aは何処か申し訳なさそうな表情をして受け取ろうとしない。
……もしかして……
翔「俺はもう一個あるし、食いたきゃまた買えばいいからよ。……それとも、メロンパン、嫌いだったか？」
その言葉にAはブンブンと首を横に振って、ようやくパンを受け取った。
そして、ゆっくりと口を動かして、うっすらと笑顔を浮かべた。
声こそ出さなくても、今のはちゃんと伝わった。
『ありがとう』
って、言ったんだよな。
その言葉と笑顔に、俺も自然と笑顔で返した。
……そう言えば、ドタバタして聞きそびれてたけど……
翔「なあ、お前……」
「あ！！翔ちゃーーーーーーん！！」
まるで仕組んだかと思うようなタイミングで、懐かしいようなそうでもないような声がする。
この声、まさか……
翔「な、那月……！？」
那月「やっぱり翔ちゃんです！！嬉しいなあ！！また会えるなんて！！ぎゅーーーーーーー！！」
翔「いでででででギブギブギブギブ！！はーなーせぇええええええ！！」
どうやら俺は、とんでもない奴と再会してしまったらしい……
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作者名：十九 雷音 | 作成日時：2017年4月23日 1時
