＊トキヤの歌声 ページ34
それから何日か過ぎた。
Aも俺も、テストに向けて順調に準備を進めている。
そうして時間を過ごすうち、いよいよテスト当日。
その日一日使って、アイドルコースがレコーディングルームで歌を披露して、その出来栄えが成績に繋がる。
作曲家コースは歌の披露はないにしろ、曲の出来栄えがそのまま成績になる。
その上一番プレッシャーなのが、どちらかが良くてもどちらかが悪ければ、その分減点対象にされる。
曲だけ良くても、歌だけ良くてもダメ。
ペアで挑むテストだからこその採点方法らしいけど……
女子「来栖くん、大丈夫？」
翔「お、おぉ！！どうってことねぇよ！！」
とは言ったものの、めちゃくちゃ緊張してる。
入学して初めてのテストってのもあるけど、俺の出来次第ではペアの子の成績も落としかねねぇ。
曲はいい曲作ってくれた分、すっげぇプレッシャー……
そんなことを考えている間にも、順番は次々回っていく。
龍也「次、一ノ瀬」
トキヤ「はい」
龍也先生の指示で、トキヤがレコーディングルームに入る。
トキヤのペアって、確かAだったよな？
Aとは昔からの仲だから、ちょっとひいき目入っちまうけど、あいつの曲なら大丈夫な気がする。
それに、トキヤも一応、あのHAYATOの双子の弟だっていうし。
だけど、披露されたものは、そんな予想を遥かに上回るものだった。
トキヤ「〜♪〜〜♪」
ブースの外のスピーカーから、トキヤの声がする。
最初はアカペラから始まる曲らしい。
けど……この時点ですげぇよ……
よく伸びる高音に、それでもパワーのある歌声……
次第にアカペラの部分が終わり、Aの曲が更に勢いを加速させる。
流石とか、そんなレベルじゃねぇ。
Aの曲も、トキヤの歌声も、なんでこんだけレベル高くて、プロからスカウトされねぇのか不思議なくらいだった。
自分がどんだけアイドル甘く見てたか、思わぬ形で思い知らされることになった……
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作者名：十九 雷音 | 作成日時：2017年4月23日 1時
