＊耐えるように ページ33
俺のその言葉に、案の定Aは驚いていた。
そりゃ、そうだよな。
急に心臓が良くないなんて聞いて、驚かない奴いねぇだろうし……
翔「でも、大したことねぇんだ。発作も起きてねぇし、ちょっと息切れはするけど、運動だって全然平気だし！！」
心配かけたくなくて、できるだけ明るくそう言った。
けど、Aはにこりともせず、険しい表情でノートに何かを書き、俺に見せてきた。
『嘘つかれると、傷つく』
翔「嘘なんかついてねぇよ。本当に」
『ついてる。運動大丈夫なのに、あの時苦しそうだった』
翔「それは、その……」
正直、あの時もちょっと苦しかった。
けど、ちょっと休めば本当になんともなかったし、嘘をついてるつもりは本当にねぇんだ。
ちょっとだけ、誤魔化してはいるけど……
『変な気遣いとかいらない。翔のそれ、私が喋らないのに声が出せるって言ってるのと、同じだよ？』
文字ではっきりと書かれたその言葉。
なんかちょっと、グサッと来た。
例えが適確だってのもあるけど、何より、誤魔化そうとすればするほど、余計に心配かけてるような気がして……
その上に、傷つけてる気がして……
ったく……ほんとに、お前には適わねぇな……
翔「嘘とかは、本当についてねぇんだ。発作もしばらく起きてねぇし、運動するの止められてるレベルでもねぇよ。でもやっぱ、急に激しい運動したりすると、たまに苦しくなるときは、やっぱある」
今度は一切誤魔化さず、正直に伝えた。
ようやくAも納得してくれたのか、表情から険しさが消えた。
でも、心配そうな……不安げなのは、消えてねぇ。
『アイドルやってて、平気なの？』
翔「あぁ。別に止められてるわけじゃねぇし、そこは問題ねぇよ」
『でも、今は大丈夫でも、激しいダンスとかするんでしょ？それに、アイドルは体力勝負だって……』
翔「うーん……なんかあったら、そんときゃそんときで何とかするさ」
ニッと笑ってそう言うと、Aは不安げな表情を残したまま、目に大粒の涙を浮かべた。
翔「お、おい……！！」
『翔がアイドルなりたいなら、邪魔したりしない。でも、何かあってからじゃ遅い。絶対無茶だけはしないで』
翔「A……あぁ。心配すんなって……」
そう言って、安心させるように抱きしめてやる。
俺に抱き付きながら肩を震わせるAは、何かを必死に耐えているようにも見えた。
大丈夫……
これ以上お前を不安にさせるようなこと、絶対しねぇよ……
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作者名：十九 雷音 | 作成日時：2017年4月23日 1時
