＊図書室にて ページ25
トキヤ「……何か？」
翔「いや、その……」
Aに強引に連れてこられたのは、図書室。
なんでまたこんなところにと思ってたら、一人の人物を見つけた瞬間、Aがまた強引に俺の手を引いて、そいつの前に突き出した。
その人物が、今目の前にいる、一ノ瀬 トキヤ。
A、俺がトキヤのこと気になってるって完全に勘違いしてんだろ。
これと言った用もないまま突き出されて、どうしたものかと困っていると、しびれを切らしたかのように、Aが手話でトキヤに何かを伝える。
それにトキヤもなんとも言えない表情で首をかしげてる。
翔「……なんて言ったんだ？」
トキヤ「……あなたが私のことを気にしているようで、埒が明かないのでつれて来た、と……」
やっぱ変な勘違いが生まれてる！！
トキヤが気になってるっていうより、トキヤと仲良さげにしてるAが気になってるっつうか……！！
ぜってぇ口が裂けても言えねぇけど……
とは言え、こうなっちまった以上、どうするか……
翔「と、とりあえず、俺は来栖 翔！！昨日もチラッと顔合わせたし、なんとなく覚えてるだろ？」
トキヤ「えぇ、まあ。そうでなくとも、彼女から話は聞いています」
翔「へっ？そう、なのか？」
トキヤ「はい。随分楽し気に話していましたね」
やべぇ、なんか、ちょっと嬉しい……
同時にすっげぇ恥ずかしくて、顔が熱くなるのがわかる。
それ見てか、トキヤは何故か呆れたようにため息を吐いた。
トキヤ「それで、あなたは、私の何を気にしているのです？」
翔「あ、いや、なんつうか……」
最初の本題に戻ってきて、やっぱ正直に言えるわけもなく、どう言っていいか迷っていると、何かを察したように、トキヤはAにこう声をかける。
トキヤ「結城さん、少々彼をお借りしてもよろしいでしょうか？長くはかかりませんので」
そう言われてAも少し首をかしげていたけど、こくりと頷いてみせた。
そして俺は、今度はトキヤに引き連れられて、また場所を移動することになる。
なんで俺、今日こんなに振り回されてんだ？
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作者名：十九 雷音 | 作成日時：2017年4月23日 1時
