＊意外な光景 ページ14
そして、翌日、昨日と同じように教室へ向かう。
昨日遅くまで那月に指文字教わってたから、ちょっとねみぃ……
間違っても授業中寝たりしねぇように気をつけねぇとな……
そんなことを思いながら教室へ入る。
なんとなくAを捜して教室を見回すと、誰かと話しているのが見えた。
あれは……
翔「トキヤ……？」
手話、なんだろうか、肩のあたりで手を動かしながら、何やら楽しそうに話しているA。
話し相手は、トキヤだった。
まだ二日目だってのに、いつの間に仲良くなったんだ？
しかも、あんなめちゃくちゃ取っつきにくそうな奴と……
なんか……釈然としねぇ……
そんなことを思っていると、視線に気づいたようで、Aが挨拶するように、小さく手を振った。
やべっ。入口に立ちっぱなしだった。
俺も答えるように軽く手を上げて、Aの元へ行く。
翔「えっと……おはよう？」
早速、昨日那月に教えてもらった指文字を使って挨拶をする。
Aも驚いたような表情をして、ゆっくりと指を動かす。
『わかるの？指文字』
翔「おう。昨日の夜、那月からな。お前もずっと筆談じゃ大変だろ？」
そう言うと、Aは少しだけ赤くなって、遠慮がちに指で『ありがとう』と言った。
なんかわかんねぇけど、照れてん、のか？
可愛い奴だな。
トキヤ「……では結城さん、私はこれで」
二人で話していると、トキヤは席を立とうとする。
トキヤのその様子にAはまた肩のあたりで手を動かす。
トキヤ「いえ、こちらこそ。またお話しましょう」
そう言ったトキヤの表情が、少しだけ笑っているように見えた。
手話はまだわかんねぇから、Aがなんて言ったのか全然わかんねぇ。
翔「……なんて言ったんだ？」
『楽しかった。ありがとうって』
翔「ふーん……てかお前すげぇな。あいつ、すっげぇ取っつきにくい感じなのに」
『案外いいひとだよ？話も合うし』
翔「へぇ……なんか、意外」
そう思う反面、何処か釈然としない自分がいた。
なんで、こんなモヤッとしてんだ？俺……
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作者名：十九 雷音 | 作成日時：2017年4月23日 1時
