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May.53 ページ16

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「はあ、でも最悪だ」

「ん、どした?」





ゼリーを食べ終わって、ベッドに倒れ込んだ俺が発した言葉にAさんが反応した。





「今日の打ち合わせ、結構大事なやつだったんですよ」

「…へぇ。大きな仕事だったんだ。最近、2winkも人気上がってきたもんね」

「大きな仕事というか…。担当のプロデューサーの方がちょっと厄介なんですよね…」







ぽつりぽつりと話し始めた俺の言葉をAさんは真剣に聞いてくれた。



2wink単独ライブを行うことになったこと。プロデューサーの意向で、ライブ中のアクロバットが禁止になってしまったこと。アクロバットをやらせて欲しいと懇願しても、受け入れてもらえないこと。






「今日の打ち合わせでもう一度お願いしてみるつもりだったんです。でも、2人で言っても聞く耳持ってくれなかったのに、アニキ1人じゃ話を聞いてもらえるわけない。」







俺は情けないことに涙目になってしまった。







「…そっか。それは、…プロデューサーの方が悪いね。2winkのこと全然分かってない。2winkの強みはアクロバットだけでは無いけど、それは他のグループはやってない2winkだけの強み。2人の元気でド派手なパフォーマンスを2人のファンは期待してる。だから、私はそこは譲ってはいけないと思う。諦めちゃ…だめ。」







Aさんは俺の手を握ってしっかり目を見て言ってくれた。去年のAさんを思い出して、また涙が出てくる。…ああ、熱の時ってどうしてこうも涙脆くなるんだろう。







「…Aさん。俺が元気になった時に、もう一度プロデューサーさんに話をしてみます。その時にAさんも一緒についてきてくれませんか?」

「……」








Aさんは俺の言葉に見るからに動揺して見せた。怯えたように、何かを恐れているように。









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作者名:玲咲 | 作成日時:2021年5月1日 0時

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