ミラー・ツインズを守りたいんです

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「喉渇いてない？
お水とアクエリどっちがいい？」
「…アクエリ」
「おっけい。はい、どうぞ」



病院から帰ってくる時に、いるかなと思ってアクエリとか一通り買ってきておいて正解だった。
背凭れに枕を挟んで起き上がるのを手伝う。
キャップを開けて渡すと、ゆっくりと飲み始めた。

見過ぎていたようでチラリと目が合い、フイとまた逸らされてしまった。



「もういいの？」
「あぁ」



半分ほど飲んだペットボトルを返されたからサイドテーブルに置いた。



「……」
「ん？」
「…………ハー…」
「えっ、ちょ、どした！？」



長い沈黙の末に両手で顔を覆い俯いて大きな溜め息を吐かれたら、心配するなと言われる方が無理な話だ。
覆い隠している手を何とか退けようとするけれど、こんな熱でも力は強くて頑なに顔を見せてくれない。

ポツリと、小さな声が呟いた。







「…………最悪だ、消えたい」







隠せていない耳が、ほんのり赤く色づいていた。



「もぉ、そんな事言わないの」
「……忘れろ」
「忘れるから」
「……嘘だな」
「ふふっ…んー、忘れないかもしれないけど、それで揶揄ったりしないよ？」
「…ならいいが」
「俺をどんだけ性格嫌な奴だと思ってんのさ」
「別にそうは思っていない…」
「ふふ、わかってる」



冷静になった今、あんなに取り乱した自分が理解できないでいるのだろう。



「ね、ずっと食べてないからお腹空いたでしょ。
桃のゼリー買ってあるから食べる？」
「…あぁ」
「じゃあ持ってくるねー」
「あ」
「ん？」
「…なら、いらない」
「え？」
「まだいいから、…ここにいろよ」



立ち上がった途端慌てたように手を掴んで言った勇吾に、胸の奥がキュンと疼いた。
こんなかわいいお強請り無下にできなくて布団の端を持ち上げベッドに入り横に座った。



「…おい、風邪移る」
「病人はそんな事気にしないの」
「……」



すぐ目の前の顔を見て、何か言いたげな表情をしているのに気づいた。

俺と目を合わせ、それから目線が僅かに下がる。
何だろうと不思議に思っていると、勇吾の手のひらが俺のお腹に当てられた。



「……なぁ、もう…痛くないのか？」



唐突な質問に驚く。
最近お腹壊した事無かったよなと記憶を辿っている間も勇吾の目は真剣で、平気だと俺も真面目に伝えた。



「大丈夫、痛くないよ」
「…そうか」



俯いて前髪に目が隠れる。
グッと唇を噛み締める様子にまた泣き出してしまうんじゃないかと思った。

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