しにたがり【地縛少年花子くん】 (ページ8)

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8話ページ8

Aちゃんは、何も言わずに教室に戻ったけど、私はその場に残った。

「花子くん、Aちゃんの願いってなんだったの？」

「…殺してください、だってさ。」

そんな…殺してください、なんて…何か嫌なことでも…。

もしかして、昨日のあれは本当に虐めだったんじゃ…。
昨日は何かの間違いかもしれない、と半信半疑だったけど、確信に近づいた気がした。

「花子くん、もしかしたら…その殺してくださいっていう願いって……」

────助けてくださいってSOSなんじゃ…

そう呟けば、花子くんはニッ、と笑みを浮かべ、帽子をかぶり直した。

「それなら殺してあげないとね、虐めらるだけの可哀想なAを。」

ふたりで笑いあったあと、授業の時間ギリギリだったので走って戻った。花子くんも着いてきていたので、きっとAちゃんの様子を見に行くんだと思う。

私は、昨日始めてあったばかりだけど…
それでも心配なんだ。だから、どうか、どうか…

(Aちゃんを助けて…！)

お弁当を食べている時、弟くんの話をしている時のAちゃんは、微かに微笑んでいた。とても綺麗な笑顔で。

ヤシロと別れた俺は、1年E組の教室に来ていた。Aは窓側の一番後ろの席なうえ、奇数クラスのため、Aの席だけ飛び出ていたので色々と都合がいい。

Aのお兄ちゃんは恐らく源家の払い屋、ヤシロがよく話してる生徒会長の源輝だ。そんな一族の1人だから、Aは俺を呼び出せたし触ることが出来た。

「やっほ、A。逃げられたら困るからカンシしに来たよ」

一瞬、驚いたのか目を見開いたが、怪異慣れしているのか声を出すことなくスルーを決め込んだ。それが何となく気に食わなかった俺は背後から抱きついてみたり首筋を撫でてみたりしてみたけど、全く動じない。

軽く拗ねてると、袖口を軽く引かれた。

シャーペンでノートのある場所を示していたので、覗き込むと、丁寧な字で『お帰り願います』と書かれていた。

「やーだね。」

と耳元で囁くと、Aの肩が跳ねたのがわかった。調子に乗って、軽く舌を這わせると彼女の制服のスカートから例の短刀が姿を覗かせたので大人しくすることにした。

そういえば、さっきからやけにチラチラとAのことを見ている女子がいる。昨日Aをトイレに引き摺ってきた三人衆のうち一人だ。

全く、最近の女子は怖いねぇ〜。