9話 ページ9
放課後、Aは掃除の途中にもかかわらず、先程の女子に腕を引かれて連れて行かれた。今日は昨日と違い1人で、場所も中庭のようで、辺りに人は居なく、校舎の影になっている
「あんた、他のクラスに友達ができたからって浮かれてるんじゃないわ…よっ!!」
「A…っ!!」
名前を突き飛ばしたその女子は、躊躇いもなくAのお腹に蹴りを入れた。俺は慌てて止めに行こうとしたけど、俺は怪異だから、止めることは出来ない。
こんな時にヤシロがいてくれれば…!
「いつもいつも先輩にべったりで!調子に乗ってるの!?あんたなんか死ねばいいの、よ…」
ふとAと目が合ったその女子は、Aの姿を見て硬直した。
「普通に仲良い家族だし、お話するのもダメ、なのかな…。もしかして、他の家族は兄弟とはお話したらダメな決まりだったの?……ごめんね」
驚くほど綺麗な笑顔を張りつけたAは、例の短刀を抜き、自分の首元に当てていた。薄い真っ白な皮膚からは真っ赤な血が流れ落ちる。
「白杖代!!」
俺が咄嗟に飛ばした白杖代はAの手元にあたり、からんからんと音を立てて女子の足元に転がり落ちる。
ひぃ、と情けない声を上げ腰を抜かした女子は、這いつくばりながらその場をあとにした。血を流しすぎたことにより貧血を起こしたのか、ぼんやりとするAを腕に抱き抱え、白杖代にヤシロを連れてくるように指示する。
すると、たまたま近くを通ったのか、慌てて駆け寄ってきた。事情を話せば、持っていた救急箱の中身で止血をし、直ぐに消毒、手当をして包帯を巻いていた。
「はなこ、さん…やしろさ、ん?」
「傷は深くなかったし、かすり傷程度だったけど出血が酷かったししばらく寝かせておこう。Aちゃん、とりあえず旧校舎に行こう」
こくり、と頷いたAを確認して、抱き抱えてその場をあとにした。
トイレに着き、途中ヤシロが購入した鉄分補給の飲み物を飲ませてしばらくすると意識が覚醒してきたのか、血を拭き取り、短刀の手入れをしていた。
「Aちゃん、もう平気なの?」
「お手数をおかけしてすみません。もう大丈夫です。」
「良かったあ〜…。」
「…ヤシロさん達おふたりが何を考えているのか、それは私には分からないけど…とにかく私のことには首を突っ込まないでください。迷惑なので。」
ハッキリとそう言って拒絶するAの姿に、胸がチクリ、と傷ついたような気がした。それはヤシロも同じようだ。
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作者名:あめり | 作成日時:2020年1月18日 23時