二十五話 ページ26
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ライブ終わり。
終わったのに、まだライブの余韻が残っている。
こんなに楽しいんだ。
だからファンの人達は、何度でも見たくなるんだ。
｢私は楽屋に行くけど、Aちゃんはどうする？｣
『あー……』
行きたいけど、ライブ終わりで疲れてるだろうし、行かない方がいいよね。
労いの言葉はあんず先輩だけで足りるだろうし。
『やめときますね。それじゃあ、私はこの辺で』
｢またね。気をつけて｣
先輩に手を振り返して、帰路につく。
………なんか今日長かったなぁ。
部活やって物運んで先輩探してライブ見て……。
頑張ったなぁ私。
明日もまた部活あるし、何も無いことを願っとこう。
・
歩いてる途中に、一本の電話が鳴った。
相手は、羽風先輩。
………怒られるようなことしたっけ。
『はい、もしもし』
｢あ、Aちゃん？なんで楽屋来てくれなかったのさ〜｣
私はつい、驚きの声を漏らした。
『………行ってもよかったんですか？』
｢全然いいよ〜。あ、気遣ってくれたの？｣
『ライブ終わりで、忙しいかと思って……』
｢あはは、そんなの気にしなくていいのに｣
なんだ、行ってよかったんだ。
ほっ、と胸を撫で下ろす。
安心したと同時に、一つの疑問が浮かび上がった。
『なんで先輩は、私に電話をかけたんですか？』
わざわざ電話じゃなくとも、メールでできたはずなのだ。
なのにこの人は、メールじゃなくて電話を選んだ。なんで？
｢今日の感想をさ、Aちゃんの方からも聞きたくて｣
『それならメールでも……』
｢こ、声！声で知りたいの！気持ちのこもり具合とかが分かるし？｣
………まぁ、確かに？
少し引っかかる点はなきにしもあらずだが、気にしないことにしよう。
多分この人は、今言わないと後々面倒になるタイプだと思う。
｢とりあえずそんなことはいいから！ど、どうだった？Aちゃん的に｣
こんなことを本人に直接言うのはなんだか恥ずかしいけど、電話越しだし、いいよね。
『………かっこよかったですよ、先輩』
耳から、先輩の間抜けな声が聞こえた。
｢………ほんと？｣
『本当です。とってもかっこよかったですよ』
｢よかったぁ。俺、ちょ〜安心した｣
『ふふ。あ、もう遅いんで寝ますね』
｢あ、うん。おやすみ〜｣
『おやすみなさい』
ピッ、と通話が終了する。
………好きだなぁ。
"アイドル"の先輩。
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作者名：さかな | 作成日時：2023年10月23日 21時
