二十四話 ページ25
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『お待たせしました…！！』
本番10分前。
なんとか羽風先輩をステージに届けることが出来た。
｢ありがとうAちゃん！！本当にありがとう！！｣
『あんず先輩の力になれて良かったです』
仕事って言っていいのかわかんないけど、一つの仕事を成し遂げた感がすごい。
私はこういう、外からバシバシ指示したりする人じゃなくて、指示される人の方が向いてるのかもしれない。
走り回って疲れたし、少し休憩しよう。
『ふぅ〜』
こんなにも水が美味しいって思えたの初めて。
あ、ライブ見るんだった。
あと数分で始まるし、ステージの方へ移動しよう。
｢Aちゃん、こっちの方がよく見えるよ｣
『ありがとうございます』
ここってもう、関係者席じゃないですか。
私が座っていいの？関係者なの？私。
………深く考えるのはやめよう。
今は目の前の、UNDEADのライブに集中しないと。
本人からも言われたんだし。
｢珍しいね。Aちゃんがライブを見るなんて｣
『そうですか？』
｢だって、DDDとか見てなかったでしょ｣
あー、そう言われればそうかもしれない。
DDDとは、SSの出場をかけてトーナメント戦で対決をするドリフェス。決勝は、fineとTricksterで優勝はTricksterだったらしい。真白から聞いた。
一般も参加していたため、結構大きなドリフェスだったが、それを私は一切見ていなかった。
『私あの時、風邪引いてたんですよね』
｢あ、そうなの？大丈夫だった？｣
『全然大丈夫です。すぐに治りました』
だからこそなのか、真白には絶対見た方がよかったって何回も言われたけど。
｢その後のライブも見てないよね。B1とかも｣
『あれ全部休み時間じゃないですか。昼はご飯食べてるし放課後はもう帰ってます』
｢……？ でも、なんで今回は見てるの？｣
ギクリ、と私の心臓が跳ね上がる。
どう説明しようか。嘘をついてもあんず先輩には効かない気がする。
『………本人に、言われたので』
｢羽風先輩？｣
『はい。………もう、なんなんですか？その顔は。ムカつくんですけど』
｢い〜や？なんにもありませんよ〜｣
ずーっとニヤニヤしてるあんず先輩。
そんな顔しても可愛いのは確かだけど、多少ムカつく。
あんず先輩から目を逸らし、ステージを見た瞬間、羽風先輩と目が合った。
ドクンと、胸が波を打つ。
………普段の先輩と、アイドルの先輩とのギャップを感じて。
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作者名：さかな | 作成日時：2023年10月23日 21時
