二十三話 ページ24
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………いた！
『先輩！探しましたよ！なにこんなとこで道草食ってるんですか！』
私は、羽風先輩を見つけた瞬間に腕をグイッと引っ張った。
｢わっ！？｣
先輩は驚きを隠せないようだが、説明はそんなの後だ。
｢薫？この子は誰？｣
｢えぇ？えーっと……｣
本番の日まで女の人と遊んでるとか、生粋の女好きだな。
とりあえず私のことを疑ってる目で見られてるし自己紹介でもしておこうか。
『初めまして、四宮Aです。先輩とは仲良くさせてもらってます』
うん、第一印象はよくしてかないと。
｢仲良く？｣
『はい。以前は髪を乾かしてくれたり』
｢髪を乾かす？｣
『お茶にも誘ってくれて』
｢お茶に誘う？｣
断ったけど。
『駆け落ちも誘われましたね』
｢駆け落ちぃ！？｣
断ったけど。私はサボらない優等生なので。
｢ちょっとちょっと！駆け落ちは語弊があるよ！一緒にサボらないって聞いただけだし！｣
｢ならその前の2つは事実ってこと！？私以外の女と！？｣
あれ、これ修羅場？
『いいから行きますよ！少しの間だけ羽風先輩借りますからね！』
修羅場ってる2人の間に、仲裁をするかのように割って入った後、私はまたもや先輩の腕を掴み走り出した。
｢………今駆け落ちしてるじゃない！！｣
遠くからそんな声が聞こえた。
走ってる最中に、後ろから声をかけられた。
｢………Aちゃん｣
『……なんですか』
｢なんでここに来たの？｣
私は時間もやばいので走りながら答えた。
『全部終わった後に話します』
｢えぇ。ライブよりそっちの方が気になるんだけど？｣
『お客さん優先にしてください。お客の女の子が悲しみますよ』
女の子というワードを出しとけばいいと思ってる私がいる。
｢………Aちゃんは見てくれないの？｣
『はい？』
羽風先輩が足を止めるので、私も一緒に足が止まる。
｢俺、Aちゃんが見てくれるって言うなら、本気だそうかな｣
いつも本気出してくれ。
と言うのは、野暮というものだろう。
『………わかりました。先輩のこと、見守っときます』
｢！ 絶対だよ！｣
『はい。必ず』
本当に嬉しいのか、表情筋がゆるゆるだ。
｢あ、あとそれとさ、｣
『なんですか？』
まだ何か言うことがあるのかと思い、そのまま話し出すのを待つ。
｢なんか……駆け落ちみたいだね｣
お前もか。
本人が照れるな。
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作者名：さかな | 作成日時：2023年10月23日 21時
