240メートルの誤算4【佐野玲於】

ライン ページ1

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翌朝
アラームの音で目を覚ました。

昨日すげー嫌な気分で帰ってきて、やっぱりAのこと思い出して落ち込んで
もう全部どうでもいいやって思えるくらい、ボロボロだったのに
…それでもやっぱ、生きてられるもんなんだな。


起き上がりベッドから出ようとしたとき
スマホに通知が届いてて
慌てて見たけど、Aからじゃなかった。

[ さくらちゃんが玲於のライン教えてほしい言うてるけどええよな？ ]

夜中にきてた龍友くんからのライン。
ダメって速攻返事しようと思ってたのに、時すでに遅し。

[ 龍友くんからライン教えてもらった！追加よろしくね！ ]
[ ちゃんと部屋まで帰れた？途中で寝てない？笑 ]

同じく夜中に来てたライン。
…勘弁してよ。
とりあえず未読のまま放置した。もちろん追加もしてない。


…夢か、現実か、いまいち思い出せないんだけど
さくらちゃん、この前会ったの覚えてる？とか、言ってたな。

え、現実だよね？
たぶんそう。言われてピンときた。
何日か前、このマンションのエントランス入った時に感じた、あの香水の匂い。
あのときすれ違ったの、さくらちゃん？
顔見たはずなのに、あの時は気付けなかった。
…いや、気付かなくてよかった。


だとしたら何？
あの子もこのマンション住んでんの？
嘘でしょ？
けど昨日は、俺だけがここでタクシー降りたし
よくわかんねえ。
でも、知りたくもない。というかどうでもいい。


Aとのラインを開く。
…昨日さくらちゃんが同じタクシーに乗ってなかったら、おはよって、今頃あの小さなベッドで言い合ってたのかな。
シラフじゃとてもそんな勇気はない。

もちろんAからの連絡はないし
別れるの嘘だから今日行っていい？って、入力したメッセージも、送れないまま。


…このまま会わないでいたら、いつか忘れられんのかなあ。

俺は一緒にいたいけど
たぶん、一緒にいたら、どんどんダメになってく。
俺は自分に自信が持てなくなる一方だし
大切な仕事すら、一時は手放そうかと思ってしまうほど。

Aだって、好きでもない男と一緒にいるなんてかわいそうだ。
23歳だよ、俺も、Aも。
まだ若い。

服とか一緒に買い行ったり
原宿で行列並んだり
お揃いのカチューシャつけて夢の国とか。
そういうの、俺には叶えてあげられないから。


頭では分かってる
けど
…やっぱつらいなあ。


広いベッドにひとり。
消えて無くなるんじゃないかと思った。
もう、それでもよかったけど。


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