240メートルの誤算【佐野玲於】

混乱 ページ13

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予想外の返答に混乱したわたし
ほんとは別れたくないはずなのに、必死に言い返す。

「なんで？別れた方がいいって、玲於くんも思ってたはずだよ。」
「思ってない。思ったことなかった。」
「うそだよ…」
「うそじゃない。」
「…だって、めんどくさかったでしょ、わたし。」
「女は大抵めんどくさい。」
「…そうかもだけど、自分でもわかってたもん、彼女失格だって。」

なにが？って、じっとわたしの目を見つめながら聞いてくる。
うそでしょ、本気なの？
ほんとに、別れる気 ないの？

「な、なにがって……だってわたし、玲於くんの仕事が嫌で、」
「だから、それは仕方ないでしょ。俺だってお前が大学行くのやだよ。それと同じじゃん。」
「同じじゃないよ、わたし、ヤキモチとかそんなんじゃなくて、ほんとにやなの。玲於くん、顔も身体も、出会ったときと全然違うよ。大人になってる。嫌なの。」

不思議と、思ってることがすらすら出てきた。
別れたいって、言ったからかな
もう嫌われてもいいやって、思ってるからかな
玲於くんもムキになってて
負けじと言い返してくる。
今思い返せば、このときはただの喧嘩だった。
いつも、この番組が見たいって喧嘩するときみたいに
こんな重い議題を。


「大人になるでしょ、そりゃ。当たり前のこと言うなよ。」
「やなの、わたしだけ置いてかれてるみたい。」
「置いていかない。俺が連れてくから。」
「うそだよ。」
「だいたい、俺が変わったのはお前に会ってからじゃん。お前が、」


そこまで言ったのに、やっぱなんでもないってはぐらかした。
なに、なんなの
わたしに会って、玲於くんは変わっちゃった？
わたしに会わない方が、良かった？


「…あのとき、追いかけてごめん。」
「え？」
「玲於くんがお店に来て、3ヶ月ぶりに顔を見たとき。玲於くんは逃げたのに、追いかけてごめん。」
「…いや、なんで」
「やっぱり別れたい。」
「……。」
「……別れたい。」
「……別れたら、お前は生きていけないでしょ。」

ゆっくりと伝えられた、そんな言葉
頭が真っ白になる。
…生きていけない？


「これからも仲良くしよ、ほら、一緒風呂入ろ。」
「…え、や、やだよ。」
「ちぇ。」

何事も無かったかのように、いつもみたいに笑う玲於くん
その姿に混乱する。

生きていけないって、なに？
玲於くんの目に、わたしはどんなふうに映ってる？

聞きたいことはたくさんあったはずなのに
もうなにも声に出せなかった。


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