食い食われ

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あまりにも真剣な顔でそう言われたものだから、Aは次に出す言葉など考えることもできずにいた。

「……えっと…」

ここは反省すべきなのだろう、しかし、このじわじわ込み上げる暖かい感情が勝ってしまう。
嬉しい。彼が自分を心配してくれていることが、こんなにも。

「…どうして笑っているんだ」

「……う…………嬉しくて……」

「……は？」

「こんなに、柳くんが心配してくれてるのが…あの…分かんないけど…嬉しくて」

予想外の言葉に、蓮二も間抜けな声を出した。
もしかしなくても私恥ずかしいこと言ってるね？と照れ笑いをする彼女に、蓮二は今日1番キュンときたらしい。

「！？や、柳くん、なに…」

「全くお前は…」

「喋りづらいよ」

してやられた。そのお返しに、彼女の頬を優しく、痛くない程度につねってやる。
それでも気の緩んだ笑みを見せるAに、もっと惹かれている自分がいることに少し悔しくなった。

「今度火傷の正しい手当ての仕方を教えてやろう、みっちりな」

「長そうだなー…」

「ふ、じゃあな」

「うん、ありがとう」

別の方向に歩き始めて、3歩ほど。
蓮二は立ち止まってAを呼び止めた。

「A」

「？何ー？」

「明日は一緒に食べよう」

「！…食べる！」

今のAが1番欲しかった言葉であり、蓮二も1番伝えたかった言葉だった。