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「焦った……マジで焦った…………」
「あはは…大丈夫？」
「俺の心配よりアンタっしょ……つうかもっと怒らないんスか？こう…副部長みたいに」
「いやまあ、太ももなら服着てるし見えないでしょ、跡残っても」
「めちゃくちゃ優しいじゃん…」
手当てをして、だいぶ落ち着いてきたところでAはやっと、起こったことを全部把握した。
彼の名前は切原赤也。昼食にうどんを食べようと運んでいたところ、勢いよく転倒してしまったらしい。
倒れてきた赤也に押され、Aも巻き込まれてしまった。その上スカートに汁を零されてしまったのだ。
「あ、それ、なんだっけ…パワーアンクルだ」
「？コレ？気になんの？」
「テニス部の子は付けてるよね。精市くんも付けてたな」
「部長の友達？」
「幼馴染だよ」
アンタも付けてみる？とマジックテープをベリベリ剥がしだす彼に遠慮の意を伝えると、Aは立ち上がった。
まだ太ももはヒリヒリしているが、もうそろそろ昼休憩が終わる頃だ。
「……マジで大丈夫なんスか…」
「大丈夫大丈夫、保冷剤借りてくし。保健室までありがとう」
「ういっス…………あ！！！」
「？」
「部長には…黙ってて欲しいっていうか…」
突然大きな声を出したかと思えば、今度は小声でそう言う彼にAはつい笑い声が出る。
「悪意があってやったことじゃないもんね、大丈夫だよ、ふふ、っふ、精市くん怒ると怖いもんね」
「部長の幼馴染にヤケドさせたなんてバレたら…マジで助かる…！あざっス！！」
「いいえ〜、じゃあまたどっかでね」
「はーい！！！」
心の広い人で良かった、と赤也はスキップで教室へ帰って行った。人に火傷をさせているというのに本当に反省はしているのだろうか。
「……跡…残るかな…」
後輩の前では強がってみたものの、やはりAも女の子である。
脚に跡が残ってしまうのが嫌じゃないわけではなかった。
「うーん……ゔっ」
「すまない、大丈……Aか」
「！…柳くん！…と精市くんもだ」
太ももを気にして、下を見て歩いてしまっていたせいか何かとぶつかってしまった。
顔を上げると、見慣れた顔が2つ。
「蓮二、嬉しいのは分かるけど見ろAのこの喜んでいる表情…みたいな顔でこっちを見ないでくれるかい」
「そんな顔しているつもりはないが」
「嘘だ。絶対してる」
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作者名：ヤノ | 作成日時：2019年10月20日 0時
