食い食われ (ページ13)

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「言わないのなら最終手段だ」

「な、なに」

「お前の頼もうとしているスタミナ弁当とやらを俺が全部貰う」

「ほんとに最終手段だ！？」

Aにとってどれだけ『食』が大切か、もうお分かりだろう。
その言葉を聞いて焦り出すAに、言ってやった、と蓮二は腰に手を当てた。

「ずるい、それは…それは、ずるい」

そこまで言うのかとは思うが、そこまで言ってまで知りたいことなのだ。
言おうか言うまいか、唸るAに蓮二はまた口を開く。

「嫌ならここから逃げるなりなんなりすれば良いんじゃないか」

「え、嫌だ…」

「どうしてだ？」

「今日は……あの…や…柳くんとお昼ご飯が食べられるので、午前中…頑張りました…」

可愛い。
蓮二の脳内が9割その言葉で占められた瞬間である。

「…………」

「…………」

妙な沈黙が続く。

「…あの」

「…どうした」

耐えきれずに、それをすぐに破ったのはA。
顔を隠すように両手で財布を持ち、ぽそぽそと声を出す。

「頭を、こう…ぽん、ってされただけだよ」

「……」

「それが、柳くんだと思ってたから、嬉しかったんだけど……に…仁王くん…？なんだっけ、柳くんじゃなかったんだなって思ったら、ちょっと…残念だなと……………」

だんだん小さくなる声量。みるみる赤くなる耳なんて、高身長の蓮二からは丸見えだった。
愛おしくて、今すぐにでも抱きしめてやりたい。そんな感覚に襲われる。

「…じゃあ、こうしよう」

「？」

「上書きだ」

それを我慢して、蓮二は片手を優しくAの頭の上に乗せる。
そのまま少しだけ撫でる。サラサラの髪が艶めいて、天使の輪っかを作っていた。とても綺麗だ。

「……！」

「どうだ？」

撫でられるとは思っていなかったAは、俯いたまま顔を上げられなくなっていた。
好きな子ほどいじめたくなると言うが、彼も同じらしい。
わざと感想を聞いたりして、反応を伺ってみたりする。

「ど、どうって……どう………どう……」

「……ふ、可愛いな」

心臓が激しく脈を打ち、締め付けられるような胸の感覚と、熱い肌。
Aがなんとか絞り出した言葉。

「…………………………殺される…」

なんとも弱々しい声に、蓮二はまた微笑んだ。