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「さあ、何を食べようか」
「うーん…と、あ、これ」
「お前…本当は痩せる気など無いだろう」
「ち、ちょっと食べてくれるって言ってたし…ほら、それなら柳くんパワーつけないと駄目でしょ？この前みたいに荷物運べないよ」
次の日。待ちに待っていた、昼食の時間。
初めてきちんと一緒に食べようと約束をした昼食だった。
お互いがお互いを教室に迎えに行こうとして、廊下でばったりしてしまったらしい。
そんな小さなことも、Aも嬉しく感じていた。
「……待て、何の話だ」
「え？」
Aが食べようと選んだのはスタミナ弁当だった。
少なくとも、痩せようと言っていた女子の食べるものではない。
「俺に力が無いと言いたいのか？」
「…？」
「…？」
だが、何かがおかしかった。先程から話の辻褄が合わない。
蓮二は頭を回転させる。
「………仁王だな」
「？？？」
「いいかA、よく聞いてくれ」
「うん」
「仁王雅治、アイツは誰にでもなれる」
「…？？？」
勝手に自分に変わって、しかもAの前で変なことをした雅治に対しての少しの怒りは、今は置いておく。
事を全く理解できていないAに、蓮二は分かりやすいようにもう一度説明をした。
「丁度良い、あれを見ろ」
「…精市くん？」
食堂のおばちゃんの前に立っているのは幼馴染である精市だった。
が、長年見ている彼である。何が違うのかは分からないが、Aは違和感を感じた。
「あれは仁王だな」
「ええ〜……」
「精市は人当たりも良いし顔も整っているからな、気に入られているんだ」
「つまり？」
「おまけがもらいやすい」
「おまけがもらいやすい…」
羨ましいなと思ったことは胸の内に秘めておく。
立海まんじゅうをタダでくれたりするのだろうか。
そんなことを考えながら、ぼうっと精市(雅治)を見つめていた。
「A、そんなに見ているとまた何かされるぞ」
「ごめん、いや…じゃあ…柳くんの手じゃなかったんだ…」
小さな声でそう言ったAに、蓮二は思わず財布を落としそうになった。
仁王が？手で？Aに？何を？今までにない程に、頭をフル回転させている。
「………………何をされたんだ？」
「え、え〜……………言いにくい…」
「！？」
「…なんですかその顔…別に怪しいことじゃないよ」
「ならば尚更だ、何故言わない」
「は、恥ずかしいから」
恥ずかしいなら余計に怪しいことではないのか、と蓮二は混乱気味である。
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作者名：ヤノ | 作成日時：2019年10月20日 0時
