その憎しみは愛を退いて ページ2
『さようならだ…』
吹き荒れる風の中微かに見えた彼の微笑みと共に、一気に現実世界に引き戻される
あの日 彼は遂行した
悪夢のような最大の極秘任務をたった一人で背負いきって…
「…イタチ」
下唇を噛み締めても涙が収まる事はない。それでも溢してはダメなんだ。
せめてもの醜い己のプライドに軽く笑いながら、体を起こす
昨日は資料をまとめていて、疲れたようで途中で仮眠をとったつもりだったんだが……
「…あはは、もう五時まわってる」
一人寂しく苦笑いをし、15枚程度しか終わっていない資料を見つめる
情報管理科の最先端情報の一文
『イタチ、四代目水影と対立』
その文字が、今日はやけに胸を締め付けられて…
「…っ、くそ…！」
心が不安定に揺れた。
***
「んで、くだらねー条件つきつけられたんだな。それは、分かった。
けどな…それオレに頼むってどうよ？」
玄関口で呆れたように額に手を当てていう人物に、ぱんっと手を合わせて「そこをなんとか！」と頼み込む
立派な木造建築に大きく掲げられたシカの標本が守るように見守る中、この家の主は「しゃーねぇな」と苦笑いしながら資料を受け取った
「さっすが、シカクさん！話が早い」
満面の笑みでそう答え、診察費を割安にすると言い、帰ろうとした時静かな低音ボイスが響いた
「…男が泣いてちゃ、示しつかねーだろうが」
背を向けていたため、彼がどんな顔をして言ったのかは分からない
けれどその声はひどく穏やかで、大きくて…
「……なら、俺女になりたいですよ」
どんな冗談をも包み込める包容力を持っていた。
«…女はもっとめんどくせーだろが»
«？»
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作者名：ヨウ★(・^・) | 作成日時：2016年9月30日 17時
