Tennis match No.7 ページ8
ゆっくりと踵を返し、歩き出す。背に感じる視線は突き刺さる程の強さが無くなっていた。それはそうだろう、予想とは違ったのだろうから。よく外見で判断されてナメられるから自然と理解はしている。でも今の監督の視線は心無しか和らいだ気がする、だけ。ほ、と息を吐いた所でまた声を掛けられた。
「向坂とやら」
「…え」
しかも名前を呼ばれた。お陰で返事の前に感情を吐露してしまった。首だけで振り返る。随分と楽しげな顔をしていらっしゃる。私としても嬉しいけど。まさか色々見抜いてはいないだろうが…。
「その年でよくやるわ」
「……色々ありましたもので。私は、常に特殊…いえ、異常でしたし」
その、まさかだった。あまり衝撃を感じないのは、齋藤コーチのせいだろうか。あの人はわざとやっている様な素振りだから尚更疑わしいけど、この人はわざとというよりも…心配？それこそありえないと思う。何故かって、そんなの。
「…あなたらしくないと言われますよ」
「湧いた感情に嘘を吐く必要はどこにも無いわ」
「その考え方、見習いたい所です」
からかうみたいな口調になってしまったのは許して欲しい。だって、つい親近感が湧いてしまった。これこそ、正に湧いた感情に嘘を吐く必要無し。緩くなった感情をそのままに元来た道を戻ろうとする。また届く声は、崖を降りるのかとの事。勿論、そのつもり。山道を下る時の方が大変なんだ、本当に。海と違って、山は本当に容赦が無い。一度遭難してしまった記憶が蘇りそうで、あまり山に入りたくない部分もある。でもそこまで問題がある訳じゃないからその辺りを言う必要性は感じない。軽く会釈をして彼と別れる。そして歩き出して、獣道を通り直す。行きと帰りじゃ結構視界も変わるし、草木の生え方も違ったり新たな発見もある。…ああ、平和な気がした。
「っと、そんな事考えてたら本当に転びそう」
独り言が多いというよりも手持ち無沙汰だから駄目なんだ。やる事があまりにものんびりしたものだからかもな…うーん。崖手前の地面をよく見たら、テニスコートの様に線が引かれていた。申し訳程度に縄を張ってネットの役割をさせているから、テニスコートモチーフなのはどう見たって分かる。…足元にも気を使うから、余計に訓練になるのかな。ラケットとボールがあって、それから相手が居たらやりたかったけど、生憎とどれも無いし居ないから仕方無い。僅かな落胆のままに地面端へと手を掛けて、登って来た崖を下る。
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唯(プロフ) - 初コメント失礼します....! 入江奏多先輩好きなので、思わず舞い上がりました！ 素敵な作品をありがとうございます(*^^*) 長文失礼しましたorz (2018年1月19日 19時) (
レス) id: f51638b8bc (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 原哲也(ハラテツ)の小説も書いて欲しいです (2017年12月7日 22時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藍梓 | 作成日時：2017年12月7日 22時
