Tennis match No.44 ページ45
一通りの過去を思い返している間に、空はゆっくりと色を変え始めていた。…青から、オレンジに。ピアノの鍵盤は誰かに弾いて欲しそうに日の光を反射している。私は、静かに鍵盤の上に手を置き、ペダルには右足をそっと乗せる。一瞬に息を吸ったタイミングで、鍵盤を叩きながら耳を澄ます。ただの音の羅列になっていないか、リズミカルなのか。それでいて聴衆に対してきちんとした礼儀やマナーを持っている色になっているか。そして、ストーリー性があって何を伝えられるものなのかをはっきりさせる。
意味の無いピアノ弾きでは無く、私なりに考えたストーリーをその場で作り上げて紡いだ。両親二人が持っていた才能らしいが、私には分からない。一度だけ永四郎達の前で弾いた事があるが、それももうすぐで十年くらい前となる話だ。今更記憶を掘り返す必要も無いし、私は前に進みたい。いつまで経っても後ろを向いて過去にしがみついているんじゃ、懐古主義と取られても仕方が無い。そうじゃない、沖縄の人間は前を向けるだけの力を持っている。そう誰かに伝えたかった。…誰に、なんだろう。昔も今も誰かに伝えたいと思うのに、誰に伝えたら良いのか分からなくて困っている。
何事も、無かった。弾き終わって、真っ白い空間に戻った時にはスマートフォンにいくつか通知が来ていた事が出来事と言っても差し支えないものだろう。奏多に永四郎と、白石くん。裕からは来ていない。…裕の訓練抜けに関しては、明日辺りにでも三船コーチに謝りに行かなくちゃいけない。抜けてしまえば本当に力の差が歴然としてしまうから、絶対に許されない。私だって許さないから謝ってやり直させて欲しいんだ。
三人のメッセージは大体同じ内容で、大広間に来いとの事。…着いてしまったのかなあ。ピアノを弾き過ぎた感じはあったけどそれだけだったから。…行かなくちゃ、だなあ…嫌だな。もう。部屋から出ると途端寒くなるのを分かっているから、防寒対策はきちんとする。部屋の電力も極力使わない様に全てオフにしてから戸締まりを確認、そして部屋の扉の戸締まり。これで良し。鍵を上着のポケットに突っ込んで、大広間へと急ぐ。彼女がまた何かをしでかす前に辿り着けます様に。
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唯(プロフ) - 初コメント失礼します....! 入江奏多先輩好きなので、思わず舞い上がりました！ 素敵な作品をありがとうございます(*^^*) 長文失礼しましたorz (2018年1月19日 19時) (
レス) id: f51638b8bc (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 原哲也(ハラテツ)の小説も書いて欲しいです (2017年12月7日 22時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藍梓 | 作成日時：2017年12月7日 22時
