Tennis match No.36 ページ37
─ Side of 白石蔵ノ介 ─
彼女の目線を背に受けながら、跳ね上がったままの鼓動を抑え付ける様に左胸に掌を当てた。
あまりにも気持ちに名前すら付かないから、いっそ本人に聞いた方が早いかと思って彼女の部屋を訪ねたらどうやら湯上がりだった様で、まだ髪が濡れていた。それだけでもドキッとして落ち着かなくて、視線が彷徨ったのに彼女は気付いただろうか。湯上がりで部屋に居るから、ラフな格好なのは理解できる。だが、あまりにも露出が多過ぎて年頃の男の内の俺には刺激が強かった。お陰で暫く落ち着けなかった。
「…言ってしもうたけど、あの人のやる事が全て終わればええんよな。早めに終わらんやろか…」
他のルームメイトが戻って来る時間までは少し余裕があるから、と割り当てられた部屋に戻る間に思わず小さく呟いてしまったものの、周囲には勿論誰も居ない。彼女に近付く男もまた多いのだろうと思うと先が思いやられる部分もあるが、気持ちを伝える事ができた事で周りよりも先に進んでいると感じた。
「…今回は本気やったわ…侮れんな、向坂さん」
今までをそれなりにやり過ごしてしまったせいで、彼女の様なタイプには耐性がほとんど無い状態の俺は彼女に…向坂Aさんに振り回されるのかも知れない。けどそれでも構わなかった。彼女にどんな形でも関われるのであれば、それで。
時間が過ぎ、一足先に部屋へと戻ったら同じ部屋で過ごす二人が後から戻って来た。かと思えば二人は俺に対してかなりニヤついている、と言った。顔に出ているのか、雰囲気からバレてしまっているのか。分からないなりに試行錯誤をしても駄目だった。
「そのままで良いんじゃないかな。何があったのかは知らないけど」
「幸村。白石は多分…」
「ああ、なんだ」
何かを納得した幸村クンと不二クンには隠し事は難しい様で、どうにやってバレない様に向坂さんに会いに行こうかと考えるばかりだった。
好きだと告げてから、その気持ちはどんどん大きくなって膨らむだけで小さくなる事を知らない。こんなに切なくなるのか、と今回は妙に理解してしまって気恥ずかしさもある上に、ルームメイトのこの二人がまさか二人揃って“ 相談に乗る ”なんて言うとは思ってなかった。
「…ふふ、白石にも春が来たんだね」
「ちょっと妬けちゃうな」
「何や、君らも恋したらええやん」
…相談相手にはきっと丁度良いんやろうなあ。
浮かれていたせいで、全て見落としたと分かったのは後の話だった。
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唯(プロフ) - 初コメント失礼します....! 入江奏多先輩好きなので、思わず舞い上がりました！ 素敵な作品をありがとうございます(*^^*) 長文失礼しましたorz (2018年1月19日 19時) (
レス) id: f51638b8bc (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 原哲也(ハラテツ)の小説も書いて欲しいです (2017年12月7日 22時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藍梓 | 作成日時：2017年12月7日 22時
