Tennis match No.35 ページ36
「向坂さん、基本極めてるん？」
「基本が無ければ強くなれないから、必然的にね」
「…知りおうて良かったわ…」
顔を覆った白石くんの目の前に向かい合わせで座り、彼の様子を見て本当の用事とやらを聞こうと思っていた、のだが。…少しまずい予感がしてやはり背を向けた。あまり直視ができないのは、昨日の既視感かがこの場に漂うから。…と、考えていたら背に灯った温もり。ものの見事に予感が的中してしまった、物悲しい。
「…俺、向坂さんの事が好きやねん」
「…初めましてが昨日なのに？」
「その…一目惚れ、ってヤツ」
「……もしかして、昨日永四郎達と話してるのを見てた？」
言葉が返って来ない代わりに頷く気配がした。自然と込められたであろう、私の肩を抱き締める腕の力。すっかり揺れ切っている心情を示す様に震えた腕に手を添えて彼の言葉を待つ。
「木手クン達と話してる向坂さんを見て…何やよう分からんけど、モヤモヤしてもうて。でも笑った顔を遠目から見てドキッとしたり、訳分からん状態やった。それで、今日向坂さんと会って話せて…ものごっつ楽しかったんやけど、まだモヤモヤしてるのは変わらんから連絡先の交換のついでで聞こうと思うてたら…」
そこで言葉を止める彼に、纏まり切っていないままに話していたのだろうと予想を付けて遮る様にして問い掛ける。
「…何、初恋？」
自然と後ろから囁かれる形にはなっていたにしろ、耳元で息を飲まれては逆に戸惑う。…好きな人の前では格好付けて完璧でありたいタイプの人物の白石くんは、ある種純情だからこそ大して見目が綺麗でも無い私に憧れの様なものを抱いているのだろう。…そこまで考えて虚しくなり、内心で舌を巻く。わざとらしいのだがこれが彼の本心だと考えると、どうにも簡単に振り払えないから困ったものだ。
「…その気持ちを受け取ってはあげるけど、まだ保留になるよ。構わない？」
「ええよ。…待っとるさかい」
「私のやる事が全部終わった落ち着いたら、返事は出してあげる。どうあっても後悔しない様にね、白石くん」
言ってからも離れようとしない彼に、仕方無く。自分の唇に人差し指を触れさせてから彼の唇にその人差し指を押し当てる。すると白石くんは面白いくらい大袈裟な反応を見せた。相当なヘタレになってしまいそうだが、これはこれで。
「こうでもしなきゃ離れるつもり無かったでしょ」
「…心臓に悪い。まあええわ、今日はこれだけ言いに来たんや。俺は戻ります」
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唯(プロフ) - 初コメント失礼します....! 入江奏多先輩好きなので、思わず舞い上がりました！ 素敵な作品をありがとうございます(*^^*) 長文失礼しましたorz (2018年1月19日 19時) (
レス) id: f51638b8bc (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 原哲也(ハラテツ)の小説も書いて欲しいです (2017年12月7日 22時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藍梓 | 作成日時：2017年12月7日 22時
