Tennis match No.18 ページ19
─ Side of 向坂A ─
一試合にこんなに技を出すとは思わなかったと言えば嘘になるけど、だからといって背を狙う必要はあるか。そんな答えは勿論Noに決まってる。彼に背を向けた入江くんが狙われると分かった瞬間に動き始めた身体は玄武までを放った。お陰で手首が痛いけど怪我をするよりマシ。
迷わず返されたボールでもう一度彼のガットを狙って、試合続行をさせない様にする算段だった。
独特な言葉が陳列した技が、玄武を返そうとする。その前に私のボールが彼のガットを食い破ってコート端に落ちた。平等院鳳凰、侮るべからず。こればかりは本気でそう思う所。今さっきまでの力が抜けた感覚は何だったのか、私には分からない。何かが足りないのかも知れない。私は実際、彼に勝った訳でも無いから。ガットを切って続行不可能にしたから何なのか。私は腑に落ちない感覚のままに入江くんへと手を伸ばす。
「…有難う、入江くん」
「…僕の方こそ」
私の手を掴んで立ち上がる彼を見てから、対角線上に立つ彼へと向き直る。何かを言いたそうな顔をしていたが、私は言いたい事を告げるのみ。卑怯なものはテニスとして許されない、そう述べたから、彼には舌打ちを一つ貰った。その仕打ちも中々だけれど私は痛む手首や節々を抱えながら叫ぶ。
「…私は、これであなたに勝ったなんてつもりは無い。ガットを切ったくらいで不戦勝だった場合でも私はまだ足りない所を補う必要があると分かった。そればかりは純粋に有難かったよ、平等院くん」
最後、彼は一瞥を寄越して私に背を向けた。言葉よりも実力でぶつかる事の方が伝わる事は多い。私も学ぶ事は学んだから、後はどこまで伸ばすか、伸びるか。去り際、平等院くんに投げ渡されたのはNo.1のバッジ。…勝った気なんて無いって今言ったでしょ。聞いてなかった？その意思を込めて彼へとバッジを投げ返す。
「…鍛え直すつもりだから必要は無い！あなたが持ってて。…私は、あなたが遠征から帰って来たらまた挑むよ。今度は成長した私とそのバッジを賭けて争おう」
「…首を洗って待っているんだな、向坂A」
「上等！」
そうして去って行った彼の背を見送り、肩を竦めてみた。思ったよりガタが来てる様な気がする。久々に本気でやったのかも知れない。隣の入江くんはすっきりとした顔をしている。私の方がすっきりしたくらいなのに、何でこの人は理解者として有能なんだろう。
そして視界に映った齋藤コーチから言い渡された言葉は──。
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唯(プロフ) - 初コメント失礼します....! 入江奏多先輩好きなので、思わず舞い上がりました！ 素敵な作品をありがとうございます(*^^*) 長文失礼しましたorz (2018年1月19日 19時) (
レス) id: f51638b8bc (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 原哲也(ハラテツ)の小説も書いて欲しいです (2017年12月7日 22時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藍梓 | 作成日時：2017年12月7日 22時
