Tennis match No.16 ページ17
─ Side of 入江奏多 ─
彼女が勝利の二文字を握っていた様に見えていた戦況はいつの間にか、彼女と争う彼に有利を与えていた。何が戦況を変えたのかは分からない。彼女は特に何かをしていた訳じゃなかったから。一つ言えるのは、平等院鳳凰という人間はスーパースイートスポットを見つける事ができるからだと感じる。それはA自身が感じている事。気付いていても返し続ける気力はどこにあるんだろう。時折飛ぶ剛球であったり分裂するボールを返す精神力と動体視力は彼女を上回る人が居ない程のもの。
「…は…っ」
最初に息が切れたのは彼女の方だ。手首の動きも少し変だから恐らくは痛めた可能性がある。そんな状態で続けられる方が不利だ。…今すぐにでも試合を止めてしまいたいけど、彼女がそれを望まない事が分かるから、僕の足は動かないまま。
「…これで終いだ！」
彼の声と共に視界を細める。またも打たれたボールは剛球と化して彼女目掛けて飛ぶ。Aは、グリップを握り直していた。
「A…！」
漏れた声は小さくとも彼女を案じた。すると、きゅるりとボールが音を立てた。
─ Side of 向坂A ─
強くて重いそのボールをこれ以上ガットで受け止めて返すとなるとそろそろ千切れる可能性が見えた。新品だったガットはもうボロボロだ。ならば、打ち返す部分はもうここしか、無いんだ。グリップを握り直してボールへはフレームを向けてラケットを持つ。嫌に響く音は手応えを感じた。額を伝う汗は顎へと流れ、グリーンの地面に落ちて行く。一瞬の内に身体は自然と動いていく。ラケットのフレームの上を転がるボールを、斜め上に放る。勿論ロブに見えるだろうけど、これもまた…。
「…一の形型、朱雀」
上へと昇り切ったボールは刹那に背後へと急速に落ちるものだがそれを判断した彼は後退をする。だからこそツボにハマるのだ、これは。どこまで下がっても背後へ飛ぶ様になっているんだから。結局、彼が見上げるボールは彼の足元へと転がっていた。
だけど。
─────
朱雀
高く放るロブの様に見せて実は高速回転を掛けて相手の背後から足元に落ちる様にしたもの。急降下を鳥類に見立てた。
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唯(プロフ) - 初コメント失礼します....! 入江奏多先輩好きなので、思わず舞い上がりました！ 素敵な作品をありがとうございます(*^^*) 長文失礼しましたorz (2018年1月19日 19時) (
レス) id: f51638b8bc (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 原哲也(ハラテツ)の小説も書いて欲しいです (2017年12月7日 22時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藍梓 | 作成日時：2017年12月7日 22時
