Tennis match No.14 ページ15
瞳が笑わないタイプよりも顔に感情をそのまま出してくれる方が対処しやすい。そういう意味じゃ入江くんが一番タチが悪いと思う。…今更、なのかな。ううん、分からない。見た目だけなら可愛いのかも知れないけど一番最初に目が合って毒みたいに言葉を吐かれたから悪印象だった。…最初は、だけど。今は、帰って来て初めてできた友人の様な、腐れ縁みたいな、そんな感じ。何も感じない訳じゃないから、とてもじゃないけど敵としては対立したくはない。今回の相手は入江くんじゃないけど勿論強い相手に決まってる。…名前と肩書きを見てすぐに分かった。
「…それにしたって、Aは運が悪いよね」
「勘弁して、今日の運がすこぶる悪いだけ」
「今日、ね…」
含みを持たせた呟きをする隣のこの男は飄々とするから、重なるのは齋藤コーチだったり、幼馴染だったりする。…ナーバスになりそうだ。何だこの人。本当に迷わせて、惑わせて、何がしたい。
「…次が出番の人間の心情を揺らして何がしたいの」
「さあ？」
とぼけるつもりか、後で文句の一つや二つは受け止めて貰おうかな。…そう、私の試合相手はNo.1にどっかりと腰を掛けている奴、平等院鳳凰だ。パワーにかなりの差があるからと最近持ち切りの噂になってるけど、私はただ真っ向勝負を仕掛けるだけじゃない。隣の彼や徳川くん、鬼くんと繰り広げた試合じゃ使わない技だって駆使しなきゃ、勝てない。そう感じた。平等院鳳凰の立ち振る舞いが醸し出すのは威圧感や圧迫だけで無く、確かな強さと強靭な精神力。更には血の滲んだ努力があった。…私は、私なりの努力を続けて帰って来た…いや、実際は呼ばれたんだけど。私なりな努力だけで勝てるのか？そこへ思考が行き詰まると、もう弱くなりそうな気持ちが存在していた事に気が付いた。
その時、私は呼ばれた。平等院鳳凰の名と共に。
「…頑張っておいで」
「……有難う」
入江くんの声を背に受けて足を踏み出す力を貰ったのは本人に筒抜けだろう。それでも構わない、私は私を奮い立たせてくれる声に気力を取り戻せた様な、気がしたんだ。
指定されるコートで、私の反対側には平等院鳳凰が立っていた。まだ少し肌寒い風が互いの頬や髪を撫ぜて通り抜ける。負けたくない。負けてしまったらその後はまた山へ篭る事になるから。…それでも良いのかも知れないと思ったのは揺れがあったからだろうか。
「…宜しくお願いします」
彼の目はとても刺々しくて、私はつい唇を噛んでしまった。
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唯(プロフ) - 初コメント失礼します....! 入江奏多先輩好きなので、思わず舞い上がりました！ 素敵な作品をありがとうございます(*^^*) 長文失礼しましたorz (2018年1月19日 19時) (
レス) id: f51638b8bc (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - 原哲也(ハラテツ)の小説も書いて欲しいです (2017年12月7日 22時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藍梓 | 作成日時：2017年12月7日 22時
