セピア色の恋なんて (ページ10)

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episode9 ページ10

保健室には高島先生がいた。

「あら、小湊くんと結城さん。どうかしたの？」

「ちょっと、手首捻っちゃって」

「礼ちゃん湿布どこ？」

「そこの上の棚よ。あるかしら」

「あった。ありがとう」

小湊先輩は湿布とはさみを持って私の前にしゃがむ。

「手首出して」

「先輩にそこまでしていただく訳には！」

「いいからほら、早く」

「あ、ありがとうございます」

ときどき痛くない？、と確認しながら手際よく手当をしてくれた。
その間ずっと緊張というか、ずっと心臓がバクバクしてもっと女の子の手だったらと思ってしまった。

こんなことで好きを自覚してしまった。
でも…同時に気づいてしまう。

「じゃあ私は行くわね。授業遅れないように」

そう言って保健室を出ていく高島先生を追う小湊先輩の目がいつもとは違うことに。

思い違いだと思いたかった私は変なことを聞いてしまう。

「小湊先輩は、高島先生のことが好きなんですか？」

「……さぁね、どうだろう。そう見えんの？」

「…はい」

「そっか。……終わったよ。じゃあね」

「ありがとうございました！」

最後に気をつけなよと言って去っていった。

「……あーあ終わったよ」

虚しさが一気に襲ってくる。
その虚しさを埋めようと必死に心の中で諦めの言葉をいくつもとなえる。

確かにあの二人ならお似合いだし話だって合いそうだし小湊先輩は絶対高島先生のこと大切にするし…
結局高島先生に勝てるものなんて何も持ってない。

だから…しょうがないんだ。

涙を堪えようと唇を噛むけどちっとも涙は引っ込んでくれない。中学の頃できた彼氏と別れた時でさえ笑えていたのに。どうして…？

その時保健室の扉が開き、クリス先輩とお兄ちゃんが入ってきた。
急いで涙を拭った。