PRESTO！【ars M.A】 (ページ13)

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13.小さな事。ページ13

人混みって、苦手な子もいるからもしかしてAちゃん疲れてないかな？って様子を伺ってみる。

Aちゃんはイチゴ飴を全部口に含んで、片っぽのほっぺがポコッてなってて

何か、ちっちゃい子みたいで可愛い。

「疲れてない？」
「んっ？んーん！」

俺の問い掛けにイチゴ飴咥えたまんま首を振って応えて

「お腹は減ってない？」
「んー...」

口から飴を出して、ちょっと考えてから「空いたかも」って少し恥ずかしそうに言う。

「何か食べに行こうか...と...思うんだけど...」

あわよくば、ご飯も一緒に行けちゃうかなー...なんて。

けど初詣だもんなー...俺が誘ったの。
ご飯じゃないもんなー...やっぱダメかなー...。

「お正月でもお店開いてるのかな？」
「えっ！？」
「え？ご飯、食べに行くんだよね？」
「あっ...うんっ！行くっ！」

アッサリお誘いが受け入れて貰えた事に、自分でもビックリしちゃってアタフタしてしまう。

「俺がよく行く店、開いてるか調べてみるね！」

俺は携帯を出して、ネットで調べる振りしてAちゃんに背を向けた。

本当は知ってる、開いてる事。

だって、うちの店の隣だもん。
そこのスタッフとも仲良いから「年中無休だから」って事も聞いてる。

だけど、嬉し過ぎてニヤニヤが止まんないから。

絶対キモいって思われちゃうから、ニヤニヤが治まるまでAちゃんに顔見られたらダメ！

「開いてるみたい！」

ようやくニヤケが治まってAちゃんを振り返ると、膨らませたほっぺをモグモグさせてる。

手にはイチゴ飴が刺さってた棒。

「あ、イチゴ飴食べ終わった？」
「うん！美味しかった」
「そっか！じゃあ、その棒捨てといたげるから貸して」
「え？自分で捨てるから大丈夫だよ、ありがと！」

ニコッと笑いながら、棒をフリフリ振ってAちゃんは駅の方向に歩き出す。

「雅紀くん、そのお店はどこ？電車乗るよね？」
「あ...うん、電車乗るよ」

小さな事だけど...

全部全部、俺に頼って欲しいなって思った。

たかがゴミを捨てるだけの事なんだけどさ

小さな事だからこそ、だよ。

駅でゴミ箱を見付けて、ポイッと棒を捨てたAちゃんを見て思ったんだ。

俺、Aちゃんに遠慮されない相手になりたい。

誰よりも近くに居れる存在になりたい。

俺になら、何でも言えるって...思って貰える存在になりたい。

君の一番になりたいんだ。