PRESTO！【ars M.A】 (ページ12)

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12.りんごイチゴ。ページ12

お詣りを済ませて、屋台を見ながら来た道を戻る。

「袖、離しちゃダメだよ？」
「うん、分かった」

また、キュッと掴まれる袖。

「あ、雅紀くん！りんご飴あるよー」
「ホントだ。買う？」

チョコバナナ無いのかなー...

「せっかくだから、久し振りに食べようかな」
「じゃ、買ったげるよ！」
「え？良いの？」
「良いの良いの！お兄さんに任せなさい！」

大きなりんご飴や、小さなイチゴ飴が並ぶ屋台の前でAちゃんが「どれにしよー」って吟味してる。

「これっ！」

そう言ってAちゃんが手にしたのは、イチゴ飴の方。

「イチゴで良いの？りんごの方がでっかいよ？」
「だから、こっち！」
「え？」
「食べ切れなかったら買ってくれた雅紀くんに悪いもん」

おじさん、これ下さい！って屋台のおっちゃんにAちゃんはイチゴ飴を見せた。

俺は「いくらですかー？」って訊きながら小銭入れを出して、おっちゃんにお金を渡す。

「はい、ありがとう！彼氏は何もいらないのかい？」
「えっ！？彼氏っ...！？あっ！ヤベッ！」

おっちゃんの言葉に動揺して小銭を地面にばら撒いちゃって、慌ててしゃがんで拾った。

「大丈夫？雅紀くん」
「あっ、うんっ！大丈夫...」
「寒いから手がかじかんじゃうよね」
「あー...うん、だよねー」

一緒にしゃがんで小銭を拾ってくれてるAちゃんが、笑いながら言う。

かじかんでる訳じゃ無いんだけど...

だって俺、むしろ暑いからね。

「はい！これで全部かな？」
「ありがと...」

俺の掌に何枚かのコインを乗せて「こちらこそ、コレ、ありがとう」ってイチゴ飴を見せて微笑む。

「おっちゃん、俺もイチゴ飴貰うね」

Aちゃんが拾ってくれた小銭をそのままおっちゃんに渡して、イチゴ飴を買った。

もう何も言わなくても掴んでくれる、袖。

「美味しいね！」

歩きながらイチゴ飴を舐めるAちゃん。

赤い実をペロッて舌で舐める仕草は、もしかしたらチョコバナナ食べるよりもえっちぃかもしんない...。

あー、その唇、俺のモンにならないかなー...。

唇だけとは言わずに、もー全部俺のモンになんないかなー...。

...あっ！こんな事、神社で考えたらダメだ！

俺はフルフルッて頭を軽く振って、自分のイチゴ飴をガリッと噛んだ。