PRESTO！【ars M.A】 (ページ14)

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14.お隣のお店。ページ14

「ここだよ」

夕飯にはちょっと早いかな？って時間に店に着いた。

「ちなみに、こっちが俺のお店」
「あ、そうなんだ！」

シャッターが閉まってる隣の店を指差して言うと、Aちゃんが「甲子園みたい」って店の壁に這ってる蔦を見て微笑んだ。

「素敵だね、蔦」
「店内はもっと素敵だよー、なんてね」
「じゃあ今度買い物に来ようかな」
「えっ！？うん！是非来てよ！」

Aちゃんに似合いそうな服なら、俺、バッチリ提案できるよ！

だってレディース入荷する度に「これ似合いそうだな」とか「この色、良いな」って妄想しながら見てたんだもん。
...ちょっと変態みたいだけど。

「明日から営業してるからさ」って言いながら、俺は隣の店の扉を開けた。

「こんにちはー」
「あ、相葉くんいらっしゃい！明けましておめでとう」
「明けましておめでとう、マスター」
「お！格好良いね、和服。似合ってるよ」

明日からそれ着て接客しなよ、なんて言って笑いながらマスターが俺達を席まで案内してくれる。

このお店は夜は洋風居酒屋だけど昼にはランチもしてるし、結構遅い時間まで開けてくれてるからうちの店のスタッフはよく利用してる。
マスターはきっと、俺のとーちゃん位の年齢だと思うんだけどいつもオシャレで格好良い。

「何飲む？相葉くんはいつも通りビール？」
「うん！ビール！」

店内は暖かくて、羽織を脱ぎながらマスターに注文してるとAちゃんがメニューを見ながら何か考えてる。

「どしたの？」
「ビール飲めると便利だよね。大人数の飲み会とかって皆とりあえずビールって頼むでしょ？」
「あー...うん、そうだね。最初はまず、人数分ビール下さいって言うかな」
「私、ビールが苦手で。お酒自体は飲めるんだけど」

味がねぇ...って眉を顰めて、ちょっと笑った。

「そうなんだ...あ！じゃあビールトレーニングする？」
「え？トレーニング？」
「マスター、シャンディガフ下さい」

キョトンとしてるAちゃんに「飲めるようになるかもよ、ビール」って言うと「ホント？」ってちょっと不審そうな顔で俺を見る。

久し振りに見た、警戒心のある表情。

けど、すぐに「どんな飲み物が来るんだろう」って楽しそうに笑ってくれるから

もう俺、その顔も怖くないかも。